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重金属入りビール!?〜日経サイエンス2019年7月号より

珪藻土を用いる濾過法によって微量の重金属が混入する可能性

 

ビールやワインを飲んで得られるのは快い陶酔だけではないようだ。微量の重金属が含まれているかもしれない。重金属は体内に蓄積して健康を害する恐れがあるため,世界中の保健機関は一部の食品や飲料に関して含有許容量の基準を設定あるいは準備している。最近,ビールとワインに微量の無機ヒ素やカドミウム,鉛が含まれる原因が,シルト質の濾過材であることが突き止められた。

 


photo by すしぱく

ビールやワインは透明で常温保存可能な製品に仕上げるために製造の最終段階で濾過を行うが,これに珪藻土が使われることがある。珪藻土は微小な水生生物の化石からなる物質で,風味に影響を与えずに不要な粒子を除去できる。過去の実験で,フルーツジュースを珪藻土で濾過するとヒ素が浸出する可能性が示されていたが,アルコール飲料について同じことがいえるかどうかは不明だった。

 

米食品医薬品局(FDA)のリダン(Benjamin Redan)とジャクソン(Lauren Jackson)らはいろいろなアルコール飲料(ラガー,エール,赤ワイン,白ワインなど)を実験室で少量ずつ醸造し,食品グレードの珪藻土3種類で濾過する前後でヒ素の含有量を調べた。この結果,ヒ素の濃度が最大で8倍に増え,リンゴ果汁向けのFDAによる許容値である10ppb(1ppbは10億分の1)を超える場合もあった(リンゴ果汁はFDAが許容基準を公表した飲料で最新の例)。市販されているワインの一部にも,微量のヒ素などの混入物質が検出された。3月のJournal of Agricultural and Food Chemistry誌に報告。

 

「検出された水準の重金属は,大量のビールを毎日飲まない限り健康を害する心配はない。ただ,食品に重金属が含まれていること自体が問題だ」と,この研究には加わっていない伊ウディネ大学のブイアッティ(Stefano Buiatti)はいう。

 

リダンらは,珪藻土の量や濾過時間を調節するなどの処置によって濾過製品のヒ素含有量を減らせることを見いだした。食品業界はすでに別の精製法を採用している。「ビール醸造業界では膜濾過技術への関心が最も高い」と米国醸造化学者学会の技術委員長パロースキー(Joe Palausky)はいう。「ほかにも低温安定化や熟成後の遠心分離など,もっと伝統的な確立ずみの方法があり,実際に使われている」。■

 

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