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脳の特定部分に介入〜日経サイエンス2019年5月号より

超音波ビームで薬剤放出

 

神経科学者が人間の脳を調べたり病気を治療したりするのに使えるツールは限られている。手術や電極の挿入はほとんどの場合,侵襲性が高すぎる。磁気刺激などの非侵襲的な方法もあるが,こちらは正確性に欠ける。これに対し最近,スタンフォード大学の神経放射線科医アイラン(Raag Airan)らは,脳の小さな領域をピンポイントで非侵襲的に操作できる方法を実証した。

 

昨年11月にNeuron誌に発表されたこの研究はアイランが長年かけて開発してきた技術を使っているが,必要な精度で機能することを示したのは今回が初めてだ。この方法では薬剤分子を詰めたナノ粒子の“かご”を血流に注入する。その後,焦点を絞った超音波ビームを目的の場所に当ててその場にあるかごを揺さぶり,薬剤を放出させる。薬剤分子は血液脳関門(脳の動脈にある膜で,小分子だけを通す)を通り抜け,脳のその部分だけで脳機能に直接作用する。

 

3ミリ角の範囲だけ

ラットを用いた実験では,超音波ビームが集中する3mm角の範囲に薬(麻酔薬を使った)の作用を限定できた。ラットの目に光を当てながら超音波をラットの脳の視覚野の一部に照射した実験で,スイッチを入れると超音波ビームの当たった部分の活動が低下し,超音波刺激を止めると10秒以内に麻酔が切れて元に戻った。

 

「空間的にも時間的にも精密で,脳内の狙った場所に局所的に介入できるというのは素晴らしい」と,カナダのトロントにあるサニーブルック研究所の神経外科医リップスマン(Nir Lipsman,この研究には加わっていない)はいう。実験ではこのほか,標的部位と接続している離れた場所で代謝活性が低下するのが観察された。この方法を脳回路のマッピングに使える可能性があることを示している。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年5月号誌面でどうぞ。

 

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