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南海トラフ プレート境界掘削断念〜日経サイエンス2019年5月号より

地球深部探査船「ちきゅう」の挑戦,厄介な地層に阻まれる

 

紀伊半島沖で海底下5200mまで穴を掘り,地震の発生現場にある岩石を採取して帰ってくる──。海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」による掘削計画は,地下深くにある厄介な地層に行く手を阻まれ,海底下3200mで断念を余儀なくされた。それでも,地震発生の現場まで2kmあまりの場所から得られた岩石試料は,誰も見たことのない地底の自然現象を知る貴重な手がかりとなる。

 

「今の技術では,目標深度までの到達は難しい」。2月上旬に海洋機構が都内で開いたプロジェクトの進捗説明会。海洋機構地球深部探査センターの倉本真一センター長はプレート境界掘削の断念を発表した。掘っている穴が海底下3000mに到達したあたりから何度も変形してしまい,それ以上深く掘り進めることができなかったのだ。

 

目指すは「地震の発生現場」

フィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に潜り込む南海トラフでは過去に何度も大きな地震が発生し,甚大な被害を起こしてきた。今後30年の発生確率は70~80%と見積もられており,かなり高い確率だ。

 

こうした大地震は,プレートの岩板同士がこすれ合う地下のプレート境界で起こる。プレート境界で周囲の岩盤にどのように力が加わり,地震に至るのかについては様々なモデルが提唱されてきた。しかし,その現場を見た人は誰もいない。「地震の発生現場」であるプレート境界の岩石を取り出して圧力の加わり方や化学変化の様子を調べれば,モデルの精度を飛躍的に高められる。プレート境界まで掘った穴にセンサーを取り付けると,地震に先行してプレート境界で起こる小さな地殻変動を捉えられる可能性もある。

 

海洋機構を中心とした掘削プロジェクトは2007年に始まった。プレート境界の掘削は世界初の試みで,海外の研究者らも多く参加した。

 

探査船を紀伊半島の50~100km沖合に停泊させ,特殊なドリルを水深約2000mの海底へ下ろして直径数十cmの穴を掘る。冬場を中心に数回に分けて行われた作業はこれまでも苦難の連続だった。2012年冬には海底下2005.5mまで掘り進んだところで海が大荒れとなり,掘削装置が損傷。2013年冬の作業では海底下3058.5mまで到達したところで崩れやすい地層にさしかかり,掘り進めなくなった。

 

2018年10月から始まった今回の作業はこの続きからの掘削だ。いきなり崩れやすい地層の中を掘るため,当初から難航が予想されていた。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年5月号誌面でどうぞ。

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