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細胞内タンパク質を特定する顕微鏡〜日経サイエンス2019年2月号より

単一細胞の詳細をのぞき見る

 

個々のヒト細胞の内部でタンパク質がどう振る舞っているかを知れば,その細胞が生き続けるのか,死ぬのか,機能不全になるかどうかがわかるだろう。病気の早期警報になりうる情報だ。だが現在の解析法は標本として少なくとも数百個から数千個の細胞が必要になるため,そうした詳しい情報を得るのは難しい。これに対し米国立パシフィックノースウェスト研究所(PNNL)のチームは最近,わずか数個(場合によってはたった1個)の細胞について,そこに含まれるタンパク質を検出・特定する“分子顕微鏡”を開発し,それを用いて病気の細胞と健康な細胞を区別した。

 

新装置は在来のタンパク質特定法に比べ,必要とする組織サンプルが1/500ですむ。ある試験では,1個のヒト肺細胞を調べて約650種のタンパク質を検出した。別の試験では,ヒトの膵臓から採取した小さな組織サンプルを調べ,糖尿病の特徴があるかどうかを判定した(膵臓の細胞が損なわれてインスリンの生産が妨げられると,1型というタイプの糖尿病となる)。このほか,ヒトの脳と肺,肝臓,子宮から採取した少数の健康な細胞を調べ,数千種類のタンパク質を特定した。的を絞り込んだ個別化医療につながると研究チームは期待している。

 

干し草の山から針を選り出して分析

この手法ではまず,組織サンプルをガラス製チップの表面にエッチングされたごく小さな窪みに入れる。次にロボットアームがそれぞれの窪みに試薬を滴下し,タンパク質を抽出・分離する。その後,質量分析計という装置を使ってタンパク質の種類を特定する。

 

従来のタンパク質特定法で得られるのは比較的大きなサンプルの概要だけで,単独の細胞や小さな細胞集団のタンパク質に関する詳細はわからなかった。「いまや干し草の山から一本一本の針を選り出して分析できるようになった。針と干し草の山をいっしょくたに分析せざるを得なかった以前の状況とは違う」と化学者のケリー(Ryan Kelly)はいう。彼と同僚のチュー(Ying Zhu)はともにPNNL在籍中にこの成果を論文にまとめ,去る夏のAngewandte Chemie誌に発表した。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年2月号誌面でどうぞ。

 

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