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産後うつのメカニズム〜日経サイエンス2019年1月号より

通常の抗うつ薬とは異なる作用機序の新薬が臨床試験で好成績

 

米国では毎年約400万人の産婦のうち10~20%が産後うつになる。この症状は母と新生児の絆(きずな)を妨げ,子供の発達を青年期まで危うくする恐れがある。的確な治療法はないが,有望な新薬がその状況を変えるかもしれない。

 

「産後うつの女性を特定して直ちに治療する必要性は切実だ」と,ノースカロライナ大学女性気分障害センターで周産期精神医学プログラム長を務めているメルツァー=ブロディ(Samantha Meltzer-Brody)はいう。彼女は最近,この産後うつ治療薬の臨床試験を実施した。出産間もない母親に生じるホルモン変化を標的にした新薬だ。

 

アロプレグナノロンとGABA受容体

産後うつになった女性の多くは,プロザックのような選択的セロトニン再取り込み阻害薬など,標準的な抗うつ薬を処方されている。だが,それらの薬がどれだけ効いているのかは定かでない。産後うつの場合,神経伝達物質のセロトニンの果たす役割は副次的であるか,まったく関与していない可能性もあるからだ。産後うつの原因として,別の生物学的過程が疑われている。

 

妊娠すると,生殖ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが劇的に上昇する。また,アロプレグナノロンというステロイドの脳内レベルも急上昇する。この物質は通常,脳細胞に発火停止の信号を送る神経化学物質GABAの受容体を活性化している。妊娠中はアロプレグナノロンによるGABA受容体の過剰活性化を避けるため,GABA受容体がそもそも休眠する。さもないと,妊婦は麻酔がかかったように感覚が実質的に麻痺してしまうだろう。出産後,エストロゲンとプロゲステロン,アロプレグナノロンはただちに通常レベルに戻り,続いてGABA受容体の活性レベルも急速に回復する。だが一部の産婦ではこの回復に時間がかかり,それが産後うつを引き起こすと考えられる。

 

セージ・セラピューティクス社が開発したこの新薬は,アロプレグナノロンのレベルを上げる。これによってGABA受容体を活性化し,健全なレベルに保つ。メルツァー=ブロディが21人の重度の産後うつ患者を対象に行った第2相臨床試験では,この薬の投与を受けた患者の70%が寛解した。最も重要なことに,効果は投与直後に表れ,30日間持続した。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年1月号誌面でどうぞ。

 

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