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レム睡眠に必要な遺伝子〜日経サイエンス2019年1月号より

アセチルコリン受容体の遺伝子が重要

 

睡眠にレム睡眠(急速眼球運動睡眠)という段階があって,夢や学習・記憶の向上に関係があることが1950年代から知られているが,そのメカニズムの多くはいまだに謎だ。最近の研究で,レム睡眠に重要な役割を果たしている2つの遺伝子が特定された。

 

Chrm1Chrm3という遺伝子が欠損したマウスは通常のマウスよりも睡眠時間が数時間短く,レム睡眠がほとんど検出できないレベルになることがわかった。レム睡眠に必須の遺伝子を突き止めたのは初めてだと,8月のCell Reports誌に報告されたこの研究を率いた理化学研究所・生命機能科学研究センターの上田泰己(うえだ・ひろき)はいう。

 

上田らは神経伝達物質のアセチルコリンと脳細胞にあるその受容体に注目した。アセチルコリンがレム睡眠の調節に関連していることが以前の研究で知られていたが,上田のチームは具体的にどの遺伝子と受容体が関与しているのかを解明しようと考えた。遺伝子を編集するクリスパー・キャス9法の一種を用いて,異なるアセチルコリン受容体をコードしている遺伝子を欠損したマウス7匹を作製した。この遺伝子改変マウスと8匹の対照マウスについて,脳波計と筋電計を用いてレム睡眠とノンレム睡眠を測定した。

 

Chrm1遺伝子とChrm3遺伝子の両方を欠損したマウスは,通常のマウスよりも睡眠時間が短く,レム睡眠はほとんどなかった。Chrm1だけを欠損したマウスは,レム睡眠が通常よりも短く断片的だった。Chrm3だけを欠損したマウスでは,ノンレム睡眠が短くなった。

 

この研究には加わっていない筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の林悠(はやし・ゆう)は,この結果はレム睡眠が生存に必須ではないことを意味している可能性があるという。変異マウスはどういうわけか,レム睡眠なしですませたのだから。あるいは,これらのマウスは脳のもっと深い層でレム睡眠を起こしていて,実験では検出できなかったのかもしれない。これらの可能性を解きほぐすには,さらなる研究が必要だ。■

 

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