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ヘディングの影響に男女差〜日経サイエンス2018年12月号より

女性のほうが脳にダメージを受けやすい

 

サッカーでヘディングを繰り返すと選手の脳に損傷が生じる。新たな研究によると,この損失(ダメージを受けた脳細胞の体積)は男性よりも女性選手のほうが5倍大きい。

 

スポーツで脳損傷を受けた女性は男性よりも深刻な症状を訴え,回復にかかる時間も長いが,新研究はこの点に生物学的な説明を与えている。これまで女性選手の訴えがまともに取りあわれなかったのは,そうした差異に関する生理学的な証拠がほとんどなかったからだと,研究論文を共著したアルベルト・アインシュタイン医学校の神経科学者リプトン(Michael Lipton)はいう。

 

リプトンのチームは前年に様々な頻度でボールをヘディングした98人の成人のアマチュアサッカー選手(男女半々)の頭蓋を磁気共鳴画像法で調べた。この結果,女性では脳の信号伝達を担う白質領域の8カ所に構造的な劣化が見られたのに対し,男性ではわずか3カ所にとどまった(損傷は報告されたヘディングの数に応じて増えた)。さらに,調査対象の女性選手は平均で約2100mm3の脳組織が損傷していたのに比べ,男性選手は平均で400mm3にすぎなかった。

 

違いが生じる原因は?

男女でこうした違いが生じる原因はまだ不明だが,リプトンは2つの可能性を指摘している。女性は首と頭を安定に保つ筋肉の量が一般に男性よりも少ないため,頭部への打撃によって強い衝撃を被る可能性があるだろう。あるいは,脳の腫脹を防ぐプロゲステロンというホルモンが月経周期のある段階で低下するため,この間は女性のほうが男性よりも脳損傷を受けやすくなるのかもしれない。

 

新研究は大きな外傷ではなく頭蓋への反復的な打撃の累積効果に注目した点がユニークで,デラウェア大学の生理学者カミンスキー(Thomas Kaminski)はその意味で「実に画期的」だと評する。「今回の被験者で脳震盪(のうしんとう)の前歴がある人はほとんどいなかった」。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年12月号誌面でどうぞ。

 

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