News Scan

固体中のマヨラナ粒子を観測〜日経サイエンス2018年11月号より

スピンの「液体」の中を流れる謎の粒子を熱伝導でとらえる

 

「幻の粒子『マヨラナ粒子』を発見」。7月,こんなニュースが注目を集めた。マヨラナ粒子というのは,1937年にイタリアの物理学者マヨラナ(Ettore Majorana)が理論的に存在を予測した,粒子と反粒子が同一となる粒子(正確にはフェルミ粒子)のことだ。反粒子は質量や後述のスピンが粒子と同じで,電荷と磁気モーメントが逆になったもの。電子に対する陽電子,陽子に対する反陽子などがある。マヨラナ粒子はこれまで様々な手法で探索されてきたものの確証はなく,今回,京都大学の笠原裕一准教授らのグループが「世界で初めてマヨラナ粒子を実証することに成功した」と発表した。論文は7月12日付のNature誌(電子版)に掲載された。

 

こう聞くとヒッグス粒子のような素粒子を想像するかもしれないが,観測したのは物質中に生じ,粒子のように振る舞う「準粒子」だ。例えば電子が詰まった固体の中で,あるべき場所に電子がないと,その穴は電子と逆の正電荷を持つ粒子のように振る舞う。これは「正孔」という準粒子だ。今回観測したのも,固体中に生じマヨラナ粒子として振る舞う準粒子である。

 

キタエフの予測

マヨラナの予測の後,最初に探索が始まったのは素粒子のマヨラナ粒子だった。その有力候補は,宇宙から降り注ぐニュートリノだ。岐阜県神岡町にあるスーパーカミオカンデの近くにある「カムランド」をはじめ世界中のニュートリノ観測施設で,今もマヨラナ粒子かどうかを検証する実験が進んでいる。

 

一方,準粒子のマヨラナ粒子が注目されるようになったのは比較的最近のことだ。2000年代初めごろから,複数の研究者が物体中にマヨラナ粒子が生じることを理論的に示した。中でもカリフォルニア工科大学のキタエフ(Alexei Kitaev)が,自ら構築した量子コンピューターの新しい仕組みであるトポロジカル量子コンピューターを実現するのに「量子スピン液体」という物質に生じるマヨラナ粒子を使うことを提唱した2006年の論文は,量子情報と物性の両分野に影響を与えた。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年11月号誌面でどうぞ。

 
 
 
 
 
 

サイト内の関連記事を読む