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微生物の起源に新たな光〜日経サイエンス2018年9月号より

細菌と古細菌が分岐した理由は? 合成微生物が従来説に疑問

 

進化論によると,何十億年も前,地球上の全生物の共通祖先である単細胞生物が細菌と古細菌に分かれた。最近,この2つのドメインの特徴を併せ持つ微生物が遺伝子工学技術によって作られ,この重大事件がどのように起こったのかについて新たな光が当たっている。

 

細菌と古細菌はどちらも細胞核のない単細胞生物だが,遺伝子の構成と化学組成が異なる。例えば細胞膜を構成している脂質という脂肪分子の種類が異なる。細菌と古細菌の共通祖先の細胞膜はこの両方の脂質を含んでいたため不安定で中身が漏れやすく,進化上好ましくなかったので,2つのドメインに分かれたのだと長い間考えられてきた。

 

オランダの微生物学者たちはこの仮説を検証するため,ハイブリッド脂質膜を持つ原始的な生物を再現することにした。古細菌の脂質を作り出す遺伝子を大腸菌(Escherichia coli)に挿入し,大腸菌の代謝を改変してそれらの脂質の合成に必要な分子の産生を高めた。この大腸菌株は,古細菌の脂質を30%,細菌の脂質を70%含む細胞膜を作った。4月の米国科学アカデミー紀要に報告。

 

研究チームが驚いたのは,この新しい細胞が順調に増殖し,混合脂質の細胞膜も安定していたことだ。この結果から「古細菌と細菌が分かれた原因はほかにあるとの見方が有利になった」と米国立衛生研究所(NIH)の進化・計算生物学者でこの論文を編集したクーニン(Eugene Koonin)はいう。

 

同論文を共著したフローニンゲン大学(オランダ)のドリーセン(Arnold Driessen)は別の原因の候補として,両者の共通祖先は1つではなく「複数の生命体が混ざっていた」とする説を挙げる。さらに奇妙な説として,共通祖先には細胞膜がなく,「粘土の粒子に守られたスープにすぎなかった」という見方もあるという。■

 

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