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量子コンピューターのソフトに照準〜日経サイエンス2018年8月号より

ベンチャーや産学連合が始動,小規模マシンで動くアプリの開発へ

 

汎用量子コンピューターにつながるゲート型マシンのアプリケーションソフトの開発に向けて,新たな研究開発の枠組みが相次いで始動した。3月に研究開発ベンチャーのQunaSys(キュナシス,東京都文京区)が発足。先ごろ数十ビットの小規模な量子コンピューターで動作する新しい機械学習アルゴリズムを開発した研究者らが中心だ。慶応大学は5月,IBMの量子コンピューターをクラウドで利用して量子計算のソフトを開発する産学共同の研究拠点をオープンした。一方米国では,量子化学計算で先頭を走るハーバード大学の研究者らによる有力ベンチャーが動き出した。

 

量子計算で機械学習

QunaSysは2人の大学院生,東京大学の楊天任氏と大阪大学の御手洗光祐氏が共同で設立した。楊氏がCEOとして主に経営を担い,御手洗氏がCTOを務める。技術顧問に就任した京都大学の藤井啓祐特定准教授,大阪大学の根来誠助教と北川勝浩教授が共同で研究を進める。先ごろベンチャーキャピタルから数千万円の資金を調達した。

 

御手洗氏と藤井氏は3月2日,電子アーカイブで「量子回路学習」と題した論文を公表した。現在の機械学習では,ニューラルネット内の相互作用の大きさを表すパラメーターを,最終結果と教師データとの乖離が小さくなるように調整していく「誤差逆伝播法」という手法がよく使われる。御手洗氏らはこれをもとに,量子ビットのネットワークで動作する量子版の誤差逆伝播法を開発した。

 

量子コンピューターで高速に機械学習するアルゴリズムはすでに提案されているが,計算が大がかりになるため,途中で発生するエラーを訂正しながら進める必要がある。だがエラー訂正の仕組みを組み込むには100万個以上の量子ビットを集積しなくてはならず,実現には20年以上かかるとみられている。

 

御手洗氏らが開発した量子回路学習のアルゴリズムは,エラー訂正を必要とせず,数十〜数百ビットの小規模な量子コンピューターで実行できる。ただし量子コンピューターの基本素子である量子ビットのエラー率を大幅に下げる必要がある。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年8月号誌面でどうぞ。

 

 

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