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酸欠になった古代の大洋〜日経サイエンス2018年8月号より

ペルム紀末大絶滅の詳細が判明

 

地球史上最大の大量絶滅は「大絶滅(Great Dying)」と呼ばれることがある。陸上生命の約70%と海の生命の約95%が死滅したのだから,もっともだ。2億5200万年前のペルム紀末に起こったこのペルム紀-三畳紀大量絶滅(P-T境界大量絶滅)の主犯として,現在のシベリアで起こった激しい火山活動がかねて疑われてきた。最近の研究で,少なくとも海の生物に関しては,絶滅メカニズムの詳細が判明した。世界の海が酸欠となり,生態系全体が窒息したのだ。

 

水生生物は酸素欠乏で絶滅したのだろうと以前から考えられ,それを裏づけるデータが古代のテチス海で形成された海中の岩から得られていた。しかし,この水域は当時の地球の海の15%ほどにすぎない。そこから海洋全体について決定的なことは何もいえないと,今回の研究を率いたアリゾナ州立大学の地球化学者チャン(Feifei Zhang)はいう。

 

地球規模の酸欠の証拠

これに対し「私たちのデータはP-T境界大量絶滅の際に地球規模で海の酸素欠乏が急激に進んだことを示している」とチャンはいう。Geology誌4月号に報告されたこの発見のカギは,岩に含まれるウランを計測して古代の海の酸素濃度を推定する新しい手法だ。この方法によって,大量絶滅時に当時の地球の大部分に広がる大洋「パンサラッサ」の中央で形成された岩石(日本で採集)のなかに,手がかりを見つけることができた。「全地球的な痕跡を見ているところが,この研究の最大の注目点だ」と,独ミュンスター大学の地球化学者ブレンネッカ(Gregory Brennecka)はいう。

 

この発見は現代にも関係があるといえる。この古代の酸欠の原因は,シベリアの火山が二酸化炭素を大気中に噴出したために起こった気候変動である可能性が高い。そして現在は人間活動が地球を暖め,数十年前に比べて海の酸素濃度が下がっている。ブレンネッカは将来予測には注意が必要だと断りつつ,「海で大規模な変化が起こると生物が死滅するのは明らかだと思う」という。■

 

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