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警戒する植物〜日経サイエンス2018年7月号より

動物がいるだけで様々な防御機構が発動する

 

 植物は逃げも隠れもできないので,動物に食べられるのを避けるには別の戦略が必要だ。動物の唾液がかかったり動物にかじられたり卵を産みつけられたり,襲撃の確かなシグナルを検知すると,葉を丸める植物や,味をまずくする化学物質を大量生産する植物がある。最近,一部の植物は襲撃のずっと前に草食性動物を検知できることが示された。先んじて防御策を発動し,それが別の敵に対しても働くという。

 

カタツムリ粘液に反応して防衛酵素を生産

ウィスコンシン大学マディソン校の生態学者オロック(John Orrock)がカタツムリ粘液(カタツムリが這うときに出す潤滑性の粘液)を土壌に注入したところ,近くのトマトの苗木がそれに気づいたようだった。草食動物を阻止することが知られているリポキシゲナーゼという酵素の量が増えたのだ。「どの苗も実際にカタツムリに襲撃されたわけではない」とオロックはいう。「襲撃を示唆する手がかりを与えただけで,植物の化学成分に大きな変化が生じた」。

 

オロックは当初,この防御法がカタツムリに対して働くことを確かめた。そして最近の研究で,このカタツムリ粘液の警告によって植物がカタツムリ以外の別の脅威に備える効果を調べた。この結果,トマトがカタツムリ粘液にさらされて化学的防御を発動した後には,いつもならトマトの葉を食べる毛虫がこれを食べなくなることがわかった。

 

この不特定の防御は,生き残りの確率を高めるという成果を最大限に獲得しようとする戦略なのだろうとオロックはいう。3月のOecologia誌に報告。

 

どのように検出?

カタツムリの接近が植物に他の動物に関する反応を引き起こすというこの発見に,カリフォルニア大学デービス校の植物コミュニケーションの専門家カーバン(Richard Karban)は関心を持った。「植物が実際のダメージを受けていないのに反応していること,そしてその警戒信号がこのように広範囲に影響していることが重要だ」とカーバンはいう。この研究は筋が通っているが,トマトの苗が実際には触れてもいないカタツムリ粘液の化学物質をどのように検出しているのだろうかとカーバンはいぶかっている。

 

「それは100万ドルの賞金に値する難しい質問だ」とオロックはいう。これら比較的遠くの手がかりの検知を植物に可能にしているメカニズムを今後の研究が少しずつ解きほぐしていくことを彼は期待している。■

 

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