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アルツハイマー病治療の戦略転換〜日経サイエンス2018年4月号より

40年におよぶ原因探索に出口が見えず,研究は治療から発症抑制へ

 

社会の高齢化とともに,代表的な認知症であるアルツハイマー病の治療法への期待はますます高まっている。だが40年にわたって続けられてきた原因探索の試みはいまだ出口が見えず,一時,根本治療になると期待された試みも失敗に終わった。研究のターゲットは発症後の治療から,食事や生活の改善による発症抑制に移りつつある。

 

日本経済新聞社とフィナンシャル・タイムズは3月15日,日英認知症会議を東京で開催しアルツハイマー病など認知症の対策を議論する。理化学研究所や国立長寿医療研究センターで長く研究に取り組んできた学習院大学の高島明彦教授に,これまでのアルツハイマー治療薬開発の試みと最新の状況について聞いた。

 

治験失敗の衝撃

2008年,臨床医学の学術誌Lancetに,衝撃的な報告が載った。アルツハイマー病の患者にこの病気の原因の最有力候補とされていた脳内の老人斑をなくす抗体医薬を投与したところ,まったく効果が見られなかったのだ。

 

老人斑というのは,患者の脳に見られるシミのようなものだ。その正体はアミロイドβというタンパク質断片の異常な凝集体で,これが発症の引き金になると考えられていた。治験でアミロイドβをなくす抗体薬の長期投与を受けた患者8人中7人は,死亡する直前,認知症の症状が最も深刻なレベルにあった。ところが死後に脳を調べた結果,老人斑はまったく見られなかった。つまり抗体薬は,期待通り老人斑を消したにもかかわらず,症状を改善しなかった。この報告は,当時世界的に盛り上がっていたアミロイドβを減少させる試みに,冷や水を浴びせることになった。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年4月号誌面でどうぞ。

 

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