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電気自動車とコバルト不足〜日経サイエンス2018年3月号より

リチウム電池に不可欠で供給不足が懸念される

 

電気自動車の未来がスピードアップして近づいている。経済アナリストによると,2040年までに全自動車の1/3が電池駆動になる可能性がある。それらの大半は大型のリチウムイオン電池を利用することになるため,世界のリチウム供給がついていけるかどうかが懸念されている。ところが,別の元素のほうがもっと心配だと指摘する科学論文が去る10月のJoule誌に掲載された。コバルトだ。

 

「最良のリチウム電池はすべて負極にコバルトを含んでいるが,コバルトの生産には限りがある」とこの研究を率いたマサチューセッツ工科大学の物質科学者オリベッティ(Elsa Olivetti)はいう。オリベッティらは電気自動車が予想通り普及した場合にコバルトの供給がどう不足するかを計算した。そして,ぎょっとする結果を得た。

 

リチウム電池の負極はコバルトその他の金属の組み合わせを含むリチウム金属酸化物の層からなる。コバルト独特の原子特性は多くのエネルギーを小さな空間に詰め込むことを可能にし,負極の層構造の維持にも役立っている。

 

オリベッティらはリチウムとコバルトの供給傾向を2024年まで推定した。一方,需要を計算するために,電気自動車と携帯型電子機器に使われる電池の増加ペースが速い場合と遅い場合の2つのシナリオを作った。

 

2025年にも供給不足

この結果,リチウムは長期的には制限要因にならないとみられることがわかった。だがコバルトの需要は,2025年の電気自動車販売台数を1000万台とする非常に控えめな推定の場合でも,同年に33万トンに達する可能性があり,その年の供給可能量29万トンを上回る。

 

コバルトは銅とニッケルの採鉱の副産物なので,コバルトの生産はそれらの金属の需要に左右される。さらに,世界のコバルトの産出量の半分以上は政情が不安定なコンゴ民主共和国による。

 

リチウム電池のリサイクルは複雑で,ほとんど行われていない。今後リサイクル率が高まり処理費用が安くなったとしても,「リサイクルの小さな効果が表れるのは,電気自動車が量販市場に浸透してから10年以上後になるだろう」と,米国立アルゴンヌ研究所の輸送システムアナリストであるゲインズ(Linda Gaines)はいう。

 

だが,新しい化学構造の負極が希望をもたらしている。最近開発されたニッケルの含有率が高い配合はコバルトの需要を減らすだろうとゲインズはいう。コバルトを使わない負極も開発中で,研究者は実用化に望みを託している。

 

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