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太陽嵐で破滅?〜日経サイエンス2018年2月号より

今後150年間の損害は膨大かも

 

人類は気候変動など地球規模の脅威に取り組み始めている。だが,破滅的な太陽嵐に備えている専門家はほとんどいない。太陽から大量の物質とエネルギーが爆発的に噴出して地球の磁場を乱す現象だ。ハーバード大学の2人の科学者は最近の査読前論文で,太陽嵐による経済的損害が拡大し,今後150年で現在の米国の国内総生産(GDP)に匹敵する約20兆ドルに達すると推定している。


IMAGE:NASA/SDO/AIA

 

この種の嵐には前例がある。「キャリントン・イベント」として知られる1859年の太陽嵐は巨大な太陽フレアと高エネルギー粒子の噴出から始まり,記録に残る限り最も強烈な磁気嵐を引き起こした。大気中に明るいオーロラが生じ,電信員が感電した例まであった。だが,これと同規模の太陽嵐が現在発生したら,はるかに大きな被害が出るだろう。現代社会は電力網や通信衛星,GPS(全地球測位システム)に依存する度合いが非常に大きくなっているからだ。

 

この脅威を定量化すべく,ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの宇宙物理学者ローブ(Abraham Loeb)とリンガム(Manasvi Lingam)は,太陽嵐に対する社会の脆弱性が技術進歩とともに増大すると想定した数理モデルを開発した。このモデル(論文はarXiv.orgに投稿)によると,経済的損失の可能性は,今後50年間は主に強い太陽嵐の発生確率に伴って高まっていく。その後は,技術進歩につれて脆弱性が指数関数的に高まり,技術進歩が頭打ちになるまでそれが続く。

 

最良の戦略は…

一部の科学者はこのモデルの予測を疑問視している。「経済的影響の推計は現在でも難しく,向こう100年の予測となるとなおさらだ」と,英ケンブリッジ大学リスク研究センターの研究員オートン(Edward Oughton)はいう。ただし,不確かだからといって電力網の強化や早期警告システムの改良など実際的な備えを怠ってはいけないと警告する。

 

ローブとリンガムは備えとしてもっと突飛な戦略を思い描いている。1000億ドルをかけ,地球と太陽の間に嵐をそらす磁気偏向シールドを配置する。だが太陽嵐の粒子があらゆる方向から地球に飛んでくることを考えると,この案は「まるで不合理」だろうと,コロラド大学ボルダー校大気宇宙物理学研究所の所長ベイカー(Daniel Baker)はいう。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年2月号誌面でどうぞ。

 

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