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トカゲのしっぽ振り〜日経サイエンス2018年2月号より

尾の喪失にどう適応しているか

 

アフガニスタンの高原で,腹をすかせたキツネがおいしそうなヒョウモントカゲモドキに飛びかかった。だがこのトカゲは窮地を脱する魔法の切り札を持っている。しっぽ切りだ。地面に落ちた尾がかなり長い間くねくね動き回ってキツネの気をそらし,当のトカゲはそのすきに逃げて隠れる。

 


IMAGE:Chris Parker

ヒョウモントカゲモドキは自分の体を切り離す「自切」ができる数少ないトカゲ(トカゲ亜目の動物)の一種だ。自切の術は効果的だが,ヒョウモントカゲモドキの尾は体重のおよそ1/4を占めることもある。こんなに大きな部分をいっぺんに失った状態にどうやって適応しているのだろうか?

 

チャップマン大学(カリフォルニア州)の生物学者ジャグナンダン(Kevin Jagnandan)は,トカゲが尾を失うと「脚を大きく広げた姿勢を取り」,四肢を体から遠くまで広げて歩くという。ほとんどの研究者は,この姿勢は体の重心が急に変わったことに対する反応だと考えていた。だがジャグナンダンは尾のついたヒョウモントカゲモドキを研究室で観察していて,トカゲが歩行中に尾を振り動かしているのに気づいた。尾を振る動きが移動に重要であることをうかがわせる。

 

条件下で歩行姿勢を比較

これを確かめるため,ジャグナンダンの研究チームは10匹のトカゲの歩行姿勢を様々な条件下で観察した。尾がある場合と,尾に釣り竿のごく一部(重さは無視できる)を貼りつけて固定した場合,尾を自切した場合の3つだ。これらを比較すると,体重喪失によってトカゲの動きに生じた影響と,しっぽ振りができなくなったことで動きに生じた影響を区別してとらえることができる。

 

尾を固定したトカゲと尾を失ったトカゲは同様の歩行姿勢を取ったと,研究チームは去る9月のScientific Reports誌に報告した。この結果は,尾を失ったトカゲが四肢を伸ばして歩くのは体重喪失の影響を補うためではなく,尾を振れなくなった影響を補うためであることを示唆している。尾の動きはトカゲが歩く際のバランスと安定性を保つのに役立っているのだとジャグナンダンは考えている。ネコやサルなど樹上性哺乳類の尾も同様の働きをしているとみる。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年2月号誌面でどうぞ。

 

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