News Scan

舌打ち音言語が少ない理由〜日経サイエンス2018年2月号より

歯茎の形が影響しているかもしれない

 

 アフリカの一部の言語に見られる吸着音(舌打ち音)は子音として完璧に機能する。なのに,吸着音を用いる言語が非常にまれなのはなぜだろう? 一因は口の解剖学的構造にあるようだ。

 

 吸着音言語を話す人のなかには歯槽隆線(上の歯と口蓋の間にある丸みを帯びた隆起)が小さいか欠如している例があることが以前の研究で示されていた。南洋理工大学(シンガポール)のモイシク(Scott Moisik)とマックス・プランク心理言語学研究所(オランダ・ナイメーヘン)のデデュ(Dan Dediu)は最近の研究で,様々なサイズの歯槽隆線を備えた声道内で生じる吸着音をシミュレートする生物力学モデルを開発した。2017年1月にJournal of Language Evolution誌に発表された結果は,歯槽隆線の大きな声道は明らかに不利であることを示した。この部分が大きいと口内に閉じ込めることのできる空気が少なくなり,吸着音を生み出すためにより多くの筋力を要する。

 

 モイシクらはこの結果を,吸着音の利用を妨げる解剖学的なバイアスの存在を裏づけるものとして解釈している。このバイアスは個人レベルでは弱いだろう。歯槽隆線の大きな人でも吸着音言語を習得することはできるからだ。それでもモイシクらの生物力学モデルは,歯槽隆線の大きな人は吸着音の学習を難しいと感じたり,自分の発音が誤りかもしれないと思ったりする可能性があることを示している。このバイアスが何世代にもわたって増幅された結果,世界中の言語に吸着音がほとんど見られなくなったのかもしれない。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年2月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む