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新設計の量子ビット〜日経サイエンス2018年2月号より

量子コンピューターの実現を容易に

 

量子コンピューターは理論上では,重要な問題を解く能力で在来型コンピューターを圧倒する。しかし大きな障害がある。基本的な計算単位として用いる量子ビット(キュービット)は制御が難しく,熱などの環境要因によって簡単に壊れてしまうのだ。だが最近,これらの問題に対処するのに役立ちそうな新設計の量子ビットが2種類提案された。

 

在来型コンピューターが用いるビットは1または0を表す。これに対し量子ビットは「重ね合わせ」という奇妙な量子効果のおかげで,1個の粒子でできた量子ビット1個で両方の数字を同時に表せる。重ね合わせにより,原子や電子などの1個の粒子が複数の状態(「スピン」の向きが反対の状態など)に同時に存在しうるのだ。複数の量子ビットを「量子もつれ状態」(1個の粒子の振る舞いが相方の粒子の挙動に結びつく量子力学的状態のこと)にすると,計算能力は量子ビットの数につれて指数関数的に高まりうる。理論上は,300量子ビットの量子コンピューターは観測可能な宇宙に存在する原子の数を超える計算を一度に実行できる。

 

離しても機能する新タイプ

現在,粒子のスピンの向きに基づく量子ビットは互いの間隔を約15nmにして配置する必要がある。間隔をそれ以上にすると量子もつれが崩れるからだ。これに対し豪ニューサウスウェールズ大学の量子工学者モレロ(Andrea Morello)らは500nmまで離すことのできる量子ビットを設計したと主張している。実働装置での量子ビットの制御がはるかに容易になるだろう。この「フリップフロップ量子ビット」を作り出すには,原子を構成している電子のうち1個を原子核から少し引き離す。こうすると原子にプラスの極とマイナスの極が生じ,それらが比較的長い距離で相互作用できるという。去る9月にNature Communications誌に報告した。(続く)
 

Illustration by Brown Bird Design
 
続きは現在発売中の2018年2月号誌面でどうぞ。

 

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