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悪評の恐怖〜日経サイエンス2018年1月号より

品行方正と見られるためなら,人は命も犠牲にするようだ

 

心理学者マズロー(Abraham Maslow)の有名な「欲求の階層説」によると,人は名誉や自己実現よりも,まずは食物と住まい,安全を求める。だがそれなら,ばかげた挑戦や乱暴なスポーツで重傷を負う危険を冒してまで名誉を追い求めるのはなぜなのか? ある新研究は,この欲求階層が思ったよりも流動的である可能性を示している。多くの人は自分の評判を守るために,不快や苦痛を伴う試練に耐えるらしい。

 

社会的動物が重んじる面目

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学者ヴォナシュ(Andy Vonasch)らは111人の米国人を対象に,評判をどれほど重んじるかに関してオンラインのアンケート調査を行った。回答者の40%は,犯罪者と見られながら自由の身で過ごすよりも,潔白の評判を保てるなら刑務所に1年間入ることを選ぶと答えた。投獄は実害になるものの,「評判は社会において自分が望むもの全般を手に入れるのに役立つという点で貴重なのだ」とヴォナシュはいう。

 

また別の同規模の調査で,回答者の70%は顔にハーケンクロイツ(かぎ十字)の入れ墨をするくらいなら,利き腕の切断を選ぶと述べた。53%は子供を性的に虐待した疑いを持たれながら人生を送るよりもただちに死を選ぶと答え,30%は幸せに長生きしてから死後に子供への性的虐待のうわさを立てられるくらいなら,いますぐ死んだほうがましだと答えた。この結果は去る7月のSocial Psychological and Personality Science誌オンライン版に掲載された。

 

もっと現実的な設定ではどうだろうか? 調査研究の一部として,隠れた人種差別的傾向を調べるテストを白人の大学生に課した。その後,自分の成績が電子メールで広く周知されることと,「スーパーワーム」(下の写真)がうごめく容器のなかに片手を突っ込むことと,どちらがましかを選ばせた。人種差別傾向について高得点を与えられた人(実はこの評定はでたらめ)はスーパーワームを選ぶ割合が多く(低スコアの人が4%だったのに対し30%),凍りつきそうな水に手を入れることを選ぶ割合も多かった(同9%に対し63%)。多くの人はメールで結果をばらまくという脅しが実行されるかどうか疑わしいと考えていたにもかかわらず,こうした選択をした。(続く)

 

続きは現在発売中の2018年1月号誌面でどうぞ。

 

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