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安全なリチウムイオン電池〜日経サイエンス2017年12月号より

液化ガスに基づく電解質にすれば,より安全で長持ちする可能性がある

 

サムスン電子のスマートフォン「ギャラクシーノート7」の所有者の一部は昨年,多くの家電製品に使われているリチウムイオン電池が発火さらには爆発しうることを実体験によって知った。この種の電池は通常,有機溶媒に塩を溶かした液体電解質を使っている。この液体中で,一方の電極から多孔膜で隔てられた他方の電極へとイオンが移動することによって,電流が発生する。だが,この液体電解質はリチウムの樹枝状結晶を生じやすい。このリチウムの微小な繊維によって電池がショートし,温度が急上昇する。これに対し,気体を基本とする電解質にすれば,より強力で安全な電池になる可能性が最近の研究で示された。

 

カリフォルニア大学サンディエゴ校のポスドク研究員ルストムジ(Cyrus Rustomji)らは,液化フルオロメタンを溶媒とする電解質を試した。この液化ガスは,在来の液体の有機溶媒と同様にリチウム塩を溶かし込むことができる。実験用に試作した電池はフル充電と放電を400回繰り返した後でも,自己放電が少なく,電荷を保持できる時間が当初と同じだった。在来のリチウムイオン電池だと,当初の約20%に落ちる。また,この液化ガス電池では樹枝状結晶が生じなかった。先ごろのScience誌に報告。

 

フェイルセーフな電解質

標準的なリチウムイオン電池に穴が開いて電極を隔てている膜が破れた場合,電極どうしが接触してショートする。この結果,電池がオーバーヒートし,反応性のリチウム電解質が過熱して発火する恐れがある(外部から酸素が入ってくると反応はさらに激化する)。これに対しフルオロメタンが液状であるのは加圧下だけなので,新電池の場合は穴が開くと圧力が下がり,フルオロメタンが気体に戻って外部に逃れるとルストムジは説明する。この結果,「電解質がなくなり,イオンの急激な移動が起こらない」ため,発火もしないという。

 

新電池は従来のリチウムイオン電池と違って-60℃の低温でも十分に機能するので,高高度を飛ぶドローンや長距離用宇宙船に搭載する装置にも使えるとルストムジはいう。

 

マサチューセッツ工科大学で材料化学の教授を務めているサドウェイ(Donald Sadoway)は,今回の新コンセプトは「これまであまり研究されてこなかった種類の液体に目を開かせてくれた」という。ただし,過度の熱によって電池の液化ガスが急膨張して危険な圧力上昇が起こることがないようにする必要があると付け加える。■

 

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