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太古の地球を月に探る〜日経サイエンス2017年11月号より

初期地球の大気や生命の手がかりが月の土に埋もれているようだ

 

日本の月周回探査機「かぐや」(正式名はSELENE)が驚きの発見をもたらした。地球から月にやってきた酸素だ。この酸素は地球の太古の大気に関する歴史的な記録を提供してくれると科学者たちは考えている。

 

地球の大気と地表の初期の歴史を伝える信頼性の高い手がかりはほとんど存在しない。詳細な証拠は長年の間に地質活動によって消えてしまったからだ。また,地球とほぼ同時期に地球と同様の物質によってできた隕石を調べれば詳しい情報を得られるだろうが,それらも地質活動で失われた。

 

地球由来の酸素が月で見つかったことで,地球大気の最初の20億年を知る別の手段が示された。月は常に太陽風(太陽から発する荷電粒子の流れ)のなかにあるが,毎月5日間ほどは地球の磁気圏がシールドとなって太陽風が当たらなくなる。この間に限っては,地球から発した低速の酸素イオンが月まで届くようになる。

 

かぐやが検出したのはそうして月に到達した酸素イオンで,地球の高層大気から地質学的な時間をかけて流出したものが月のレゴリス(地表や岩石を覆う軟らかい堆積物)に埋め込まれたのだと科学者たちは考えている。大阪大学大学院の惑星科学者,寺田健太郎(理学研究科教授)が率いるチームはこの結果を先ごろのNature Astronomy誌に報告した。「今回の新発見は地球大気で生じたイオンが月に輸送されていることを直接に示している」と寺田は語る。

 

この結果は地球の原始的な生命体である単細胞微生物で光合成が始まった時期に起こった大変化に関心を持つ科学者を興奮させている。ざっと24億5000万年前,地球の大気は酸素の少ない状態から酸素の豊富な大気へと変化した。「大酸化イベント」と呼ばれる出来事で,いまだに謎が多い。当時の大気中酸素の一部が現在の月に残っている可能性はないだろうか? 月の土に埋め込まれているそうした地球由来の酸素を集めて解析すれば,地球大気が太古からどのように進化してきたかが見えてくるだろう。

 

そうした酸素のほか,月には原始地球の進化に関する情報がたくさん埋もれている可能性がある。「月は基本的に,地球産の岩くずの注目すべきコレクションを蓄えている」とコロンビア大学の宇宙生物学者シャーフ(Caleb Scharf)はいう。それらはさらに興味深いデータを含んでいるかもしれない。「生物の化石を含む地球の石が隕石となって月に落ち,月面に残っている可能性がゼロではないのだ」。■

 

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