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顔認識のメカニズム〜日経サイエンス2017年10月号より

その神経コードを解読する研究が進展

 

脳は多数の顔を認識して記憶するように進化してきた。だから,混雑したレストランや大通りにいる何十人もの人のなかから友人の顔をすぐに識別できる。そして,ちらっと見ただけで,その人が興奮しているのか怒っているのか,楽しいのか悲しいのかがわかる。

 

脳画像研究によって,側頭葉(こめかみの下あたり)にあるブルーベリー大の領域数カ所が,顔に対する反応に特化していることがわかった。これらの領域は「顔パッチ」と呼ばれている。しかし,脳スキャンでも患者の脳に電極を埋め込んだ臨床研究でも,顔パッチの神経細胞がどう機能しているのか正確なところは不明だった。

 

しかし最近,カリフォルニア工科大学の生物学者ツァオ(Doris Tsao)らがマカクザルの脳画像と単一ニューロンの記録を併用し,霊長類が顔認識に用いている神経コードをついに解読したようだ。同チームは顔パッチの各細胞の発火頻度が顔の個別の特徴に対応していることを発見した。これらの細胞は一連のダイヤルの組み合わせのように,個別の情報に応じて微調整され,それらが様々な道筋で統合されて,サルが見たあらゆる顔の全体像を作り出しているようだ。

 

「これには驚いた」とツァオはいう。「ある顔を見た際に各ダイヤルがどの値を取るかは非常に正確に予測でき,このため逆に,追跡した顔細胞の電気活動だけをもとにサルが見ている顔を再現できた」という。

 

顔パッチ領域のニューロン

これら顔パッチ領域が顔の情報を専門にコードしていることは以前の研究で示唆されていた。2000年代初め,ハーバード大学医学部のポスドク研究員だったツァオは電気生理学者のフライヴァルト(Winrich Freiwald)とともに,サルが顔の画像を見るたびに顔パッチ領域のニューロンが電気信号を発することを示した。それらの脳細胞は,野菜やラジオ,顔以外の身体部分など他の画像に対してはほとんど,あるいはまったく反応しない。また,顔パッチ領域のニューロンが異なる顔を区別しており,漫画に描かれた顔も区別できることが別の実験で示された。(続く)

 

 
*訂正 本誌17ページで「Coris Tsao」とあるのは「Doris Tsao」の誤りでした。
続きは現在発売中の2017年10月号誌面でどうぞ。

 

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