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夢に迫る〜日経サイエンス2017年9月号より

夢を見ている際に活動する脳領域から意識を探るアプローチ

 

「眠ることはたぶん,夢を見ることだ」──シェークスピアが言いたかったのは私たちが夜に旅する別世界のことではなかったかもしれないが,夢という現象の不思議さと意味を減ずるものでもない。夢に関する理解が最近の研究によって広がり,意識そのものについての新知見も生まれている。

 


IMEGE:By Ⅿeagan

眠りの研究は,鮮明な夢を見ている状態から完全な無意識まで,様々な意識状態を調べる手段になるとウイスコンシン大学マディソン校の神経科学者ベアード(Benjamin Baird)はいう。うたた寝している被験者を対象にすれば,感覚刺激の影響を受けていない純粋な意識体験を調べられる。

 

夢を見ている際に活動する“ホットゾーン”

ベアードとやはりウイスコンシン大学にいる意識研究の専門家トノーニ(Giulio Tononi)らは最近,夢を見ている際の脳の様子を覗き見るため,頭皮に電極をつける高密度脳波計によって睡眠中の脳波を記録した。被験者をたびたび起こして,夢を見ていたか,見ていた場合はどんな夢だったかを尋ねた。ある実験で32人の被験者からそうした情報を合計約200件集め,追加実験では夢の報告について特別に訓練を受けた小人数グループからさらに約800件の情報を集めた。

 

この結果,後頭部近くの皮質領域に“ホットゾーン”が見つかった。被験者が夢を見ていたと述べたときには,この後頭皮質領域で低周波の脳波(無意識に関連)が減り,高周波の脳波が強まっていた。これはレム睡眠中だったかどうかにはよらなかった(一般に信じられているのとは異なり,レム睡眠とノンレム睡眠のどちらでも夢を見る)。Nature Neuroscience誌に報告。

 

3つめの実験では,7人の被験者について夢を見ているかどうかを脳波から予測し,87%の確度で正しく予測できた。さらに脳の特定領域の脳波活動が夢の内容の特徴(場所,顔,会話など)と関連していることを見いだした。これらの領域は覚醒経験中にも活性化している。「今回の研究では夢の内容を脳波から予測することはしなかったが,今後のテーマとして非常に興味深い」とベアードはいう。

 

この研究方法は「実にクールで革新的な領域を開く」と,シアトルにあるアレン脳科学研究所の神経科学者コッホ(Christof Koch)はいう。また,夢に関連する活動が後頭部に集中しているという発見は驚きだという。意識は前頭頭頂領域から生じていると広く考えられているからだ。この研究の限界は,被験者を起こしてから夢について述べるまでに時間差があることだ。最終的にはこの時間差を縮め,「夢という経験に迫るのが望ましい」とコッホはいう。■

 

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