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ロケット材料が熱い〜日経サイエンス2017年9月号より

微細な“けば”つき繊維によって強度を大幅にアップ 

 

現在のロケットエンジンの内部は1600℃という猛烈な温度に達する場合がある。鋼鉄も融ける高温だ。そして未来のエンジンはさらに高温になる必要がある。高温になるほど燃料効率が高まり,より大きな推力が生じ,より大きな積み荷を運べるからだ。いずれも火星行き宇宙船や高度な航空機を実現するカギとなる。

 

より高熱に耐えられるロケット材料を求めて,太さが人の毛髪ほどの炭化ケイ素繊維をセラミックス材料に埋め込んだ丈夫で軽い複合材料の開発が続いてきた。炭化ケイ素は期待の高温エンジンに予想される2000℃に耐えられる。現在の複合材料は,炭化ケイ素繊維を織ったマットを積み重ね,その間を多孔質セラミックスで埋めて作る。だが,これら既存の複合材料はエンジン内で発生する高圧の下でひび割れを起こす場合がある。繊維どうしが滑って,セラミックスから抜けてしまうからだ。

 

これに対し,ライス大学と米航空宇宙局(NASA)グレン研究センターのチームがブレークスルーとなる可能性を持つ新材料を開発した。表面が微細なマジックテープのように“けばだった”炭化ケイ素繊維だ。最近のApplied Materials & Interfaces誌に報告されたこの繊維は,微毛が互いに絡み合うため,滑りにくく周囲のセラミックスから抜けにくいと考えられる。

 

繊維の表面にナノチューブを成長

この糸を作るため,研究チームはまず,炭化ケイ素の表面にねじれたカーボンナノチューブを成長させ,巻き毛のように突き出させた。次にこの繊維をケイ素の超微細粉末に浸して加熱し,カーボンナノチューブを炭化ケイ素繊維に変えた。このけばだった繊維を透明なゴム状ポリマーに埋め込んで強度を評価した結果,すべすべの糸を使った通常の複合材料と比べて4倍の強度があることがわかった。

 

論文を共著したNASAの技術者ハースト(Janet Hurst)によると,同チームは現在,この繊維をセラミックス媒質に埋め込んでテストする準備をしている。また,けばだった窒化ホウ素ナノチューブで覆われた繊維も作りたいと考えている。そのほうが強く,損傷を及ぼす酸素への曝露から繊維を保護できるからだ。

 

炭化ケイ素繊維は長さ方向には強いが,横方向に高い圧力がかかるとちぎれる場合がある。だがこの新繊維の場合,柔軟な“けば”がひずみを分散して逃がす効果があるため,破損を避けられるだろうと,コネティカット大学物質科学研究所の所長スイーブ(Steven Suib,今回の研究には加わっていない)はいう。■

 

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