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スーパーKEKB,実験準備大詰め〜日経サイエンス2017年6月号より

巨大な検出器を加速器に接続する「ロールイン」に成功

 

茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で,次世代の大型加速器「スーパーKEKB(ケックビー)」を用いて,素粒子物理学のフロンティアを開拓するBelle(ベル)Ⅱ国際共同実験の準備が,4月11日,1つの大きな区切りを迎えた。巨大なBelleⅡ検出器(総重量約1400トン)を建設エリアから土台ごと約13m移動させてスーパーKEKB加速器に組み込む「ロールイン」と呼ばれる作業を完了した。今後,検出器と加速器を接続するなどの作業を進め,早ければ来年初めにも実験の第1段階を始める予定だ。

 

小林・益川理論からのズレ探る
スーパーKEKBは一周約3kmのリング状の加速器だ。2010年に運転を終了した初代KEKB加速器があった地下トンネルに建設された。電子と陽電子を加速して衝突させ,膨大な数のB中間子と反B中間子のペアを生み出し,それらが崩壊する様子をBelleⅡ検出器で精密に測定する。

 

B中間子と反B中間子は電子と陽電子と同様,粒子と反粒子の関係にある。一般的に粒子と反粒子は電荷の符号の正負が逆なだけで,質量などはすべて同じ。BelleⅡ実験で生じるB中間子と反B中間子は,それらを構成するクオークと反クオークの電荷の符号が逆になっている。

 

粒子と反粒子は,崩壊のパターンも基本的に同じだ。宇宙誕生時,粒子と反粒子は等量生み出されたはずなので,今も等量残っていそうだが,現在の宇宙には粒子しか存在しない。それはなぜか。1960年代に実験で発見された粒子・反粒子の間の特性の微妙な違い「CP対称性の破れ」によって,反粒子だけがなくなってしまったのではないかと考えられ,小林誠・益川敏英両博士はCPの破れを説明する小林・益川理論を1973年に提唱した。同理論は2000年代,KEKB加速器を用いた初代Belle実験などによって検証され,両博士はノーベル賞を受賞した。

 

ただし小林・益川理論は現在の素粒子物理学の基本である「標準モデル」という理論をベースとしている。その後,さらに質量が大きな超対称性粒子が多数存在するとする超対称性理論や,これを包含する超弦理論が盛んに研究されるようになった。もしそうした理論が予言する素粒子が実在すれば,B中間子・反B中間子ペアが,小林・益川理論では説明できないパターンで崩壊するはずだ。スーパーKEKBは,この新粒子の検出を目指している。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年6月号誌面でどうぞ。

 

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