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アヒル目隠し実験〜日経サイエンス2017年6月号より

ヒナ鳥の刷り込みは左右の目で別々

 

2015年夏,英オックスフォード大学の動物学者マーティンホー(Antone Martinho Ⅲ)とカチェルニク(Alex Kacelnik)は,実にかわいらしい実験を始めた。アヒルのヒナに目隠しをつけて行う実験だ。左右どちらの目を使えるかが母鳥の「刷り込み」にどう影響するのかを調べるのが狙いだ。しかし,なぜ目の左右が関係するのか? 人間では当たり前のある脳領域が鳥にはないからだ。

 

片目を隠して刷り込み


J Marsh

人間の脳の左右の半球の間には「脳梁」という神経の太い束がある。脳梁は情報の橋渡しをしており,左右の半球が素早く情報を伝達し,一体として働くことを可能にしている。鳥の脳は完全には左右に分かれていないものの,この経路のメリットを得られない。このちょっと変わった神経構造が,無理からぬ実験につながった。「ロンドンのセントジェームズ公園に行ったとき,湖にアヒルのヒナが親鳥と一緒にいるのを見た」とマーティンホーはいう。「このとき,刷り込みを使って脳内の情報伝達を調べる実験を思いついた」。

 

2人は64匹のヒナの片目を隠し,赤または青のアヒル成鳥の模型を見せた。この色つきの偽アヒルが“母鳥”として刷り込まれ,ヒナはその後ろをついて回るようになった。だが,ここで一部のヒナの目隠しを他方の目に付け替え,それまで隠していた目で見るようにしたところ,もはや“母鳥”を認識できなくなったようで,赤のアヒルと青のアヒルに同じ親和性を示した。

 

これらのヒナが赤と青のいずれかを選好するようになるまで3時間かかった。一方,片方の目で赤のアヒル,他方の目で青のアヒルを見て別々に刷り込まれていたヒナの場合,両目を見えるようしたところ,赤青どちらを選好することもなかった。最近のAnimal Behavior誌に報告。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年6月号誌面でどうぞ。

 

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