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メイク・アース・グレート・アゲン〜日経サイエンス2017年5月号より

過去を強調したプレゼンにすれば,保守派も地球環境を配慮するようになる?

 

米国科学アカデミー紀要に先ごろ発表された研究によると,政治姿勢が保守的な人々は,環境保護の主張でも懐旧の情に訴えるメッセージなら受容しやすくなる傾向がある。

 

独ケルン大学の研究チームは保守的な人とリベラルな人(区分はいずれも自己申告による)を対象に一連の実験を行い,環境問題の提示の仕方によって本人の環境保護の気持ちがどう変わるかを調べた。例えば気候変動防止のための架空の募金事業を2つ想定し,各被験者に与えた総額0.5ドルをそれらに分けて寄付してもらう。一方の募金は将来の環境悪化を防ぐことを重視し,他方は地球を以前の健康な状態に復旧することを強調した活動だ。

 


Graphic by Amanda Montañez

この結果,どの実験でも,保守的な人は過去に力点を置いた気候変動メッセージに接した後のほうが環境保護活動を進んで受け入れるようになった(上の例では過去を強調した募金事業のほうに多くを寄付した)。

 

研究論文を共著したボールドウィン(Matthew Baldwin)はこれを,保守的な人が過去を重んじる価値観を持っているためであるとみる。そして,情報提示の仕方によって,その情報に対する人々の反応が大きく変わりうることを実証しているという。

 

この知見が現状の変化に実際につながるのか,懐疑的な見方もある。オクラホマ州立大学の環境社会学者ダンラップ(Riley Dunlap)は,この実験研究の実施手法は申し分のないものだが,気候変動に関するメッセージの提示法を再構成しても,保守派の姿勢は変わらないだろうという。政治的に二極分化した現在の米国では特にそうだ。「米国において保守派として通るには,気候変動に懐疑的である必要がある」と彼はいう。「地球温暖化は宗教や銃規制,ゲイ,中絶,税制と同様,イデオロギーに仲間入りした」。

 

それでもボールドウィンは,気候変動への対処を政治問題としてではなくマーケティングの問題としてとらえ直すことが,現在の政治的泥沼から脱するカギになるだろうと考えている。「ある製品を売りたい場合,まず腰を落ち着けて顧客が誰なのかを見極め,そこに向けた販促策を取るだろう」と彼はいう。「科学もそう違わないと思う」。■

 

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