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冥王星のクジラ模様の謎を解く〜日経サイエンス2017年5月号より

衛星カロンを作ったジャイアント・インパクトの痕跡だった

 

冥王星はかつて太陽系最外縁の第9惑星とされていたが,現在では海王星より遠い軌道を周回する多数のカイパーベルト天体の中の最大級の天体であり,準惑星の1つに数えられている。ただ惑星の座から降りても,謎に満ちた天体であることに変わりはない。ハッブル宇宙望遠鏡でも不明瞭にしかわからず,米航空宇宙局(NASA)の探査機ニューホライズンズによる2015年8月の冥王星への最接近が注目されていた。

 

探査機から送られてきた画像に多くの惑星研究者は驚いた。冥王星表面には非常に多様な物質や地形が存在していることがわかったからだ。特に注目されたのはクジラ模様のような褐色の地域「クトゥルフ領域」と,ハート模様の白っぽい地域「トンボー領域」。これらがどのようにして形成されたのか研究が進んでいる。今回,クトゥルフ領域の成因について,東京大学の関根康人准教授と東京工業大学地球生命研究所の玄田英典特任准教授を中心とする共同グループが有力仮説を1月31日付のNature Astronomy誌に発表した。

 


NASA

 

クトゥルフ領域は赤道域を中心に南北約300km,東西約3000kmに広がる帯状の地域で,東方に頭を向けた褐色のクジラのように見える。ニューホライズンズによる分光観測データから,クトゥルフ領域は水氷と褐色の有機高分子物質が混合したものでできているらしいことがわかった。

 

褐色物質の正体について,冥王星の大気中の化学反応で生成される有機物微粒子(エアロゾル)ではないかとの説がある。冥王星には窒素とメタン,一酸化炭素などからなる大気が存在し,そうしたエアロゾルが生成される可能性がある〔冥王星が超遠方の恒星の手前を横切る現象(トランジット)を望遠鏡で観測すると,恒星の光のスペクトルが冥王星大気の影響で変化するので,その観測データの解析から大気の存在と組成がわかる。ニューホライズンズによる観測で冥王星大気のより詳しいデータが得られた〕。

 

しかしエアロゾルだとすると冥王星のほぼ全域が褐色に染まる可能性が高く,クトゥルフ領域のように局限された地域を作り出すのは難しい。クトゥルフ領域は冥王星赤道域の1/3を占めるので,大規模な物理・化学プロセスによって生じたとみられるが,それがどのようなものなのか不明だった。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年5月号誌面でどうぞ。

 

 

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