News Scan

血流移動ロボットに一歩〜日経サイエンス2017年4月号より

光で操作する微小装置ができた

 

血流のなかを泳いで薬を届けたり小さな手術を行ったりする微小機械は科学者の長年の夢だ。過去15年で,化学反応や磁気,振動を利用して推進する様々な微小エンジンが作製されたが,動きの不安定なものが多い。香港大学の化学者タン(Jinyao Tang)は主な課題は目的の場所にこれらを誘導することだという。タンのチームは光の助けを借りて円滑かつ正確に操縦できる微小遊泳装置によって,この面で大きく前進した。

 

シリコンの柄と二酸化チタンのブラシ

Nature Nanotechnology誌2016年12月号に報告されているように,タンらはシリコンの柄と二酸化チタンの“ブラシヘッド”を持つ瓶洗いブラシのような形の微粒子を作った。これらの材料はどちらも光子を吸収し,光を当てると柄の部分がマイナスの水酸イオンを,ブラシ部がプラスの水素イオンを生じる。不均一な電荷分布をバランスするためにイオンが移動すると,それに流体が引っ張られ,この微小遊泳装置はダーツの矢のように柄を先にして光に向かって動く。


Illustration by Brown Bird Design

 
実験では遊泳装置をスライドガラス上の液体中に置き,紫外線を使って誘導して「nano」という単語を書いた。長さ11µmのモーターは約1mmを泳ぐのに2分かかる。医療に応用するには遅いが,タンは速度を上げるための新形状を設計中だという。

 

「速度と方向を正確に制御するこのユニークな方法は素晴らしい」と,ドイツのシュツットガルトにあるマックス・プランク・インテリジェント・システム研究所のナノロボット工学者サンチェス(Sámuel Sánchez,今回の研究には関与していない)はいう。

 
絞った光線を使って医師が患者の体外から操縦できる未来の医療用ロボットに向けた第一歩だとタンはいう。この装置は紫外線で動かしているが,研究チームは現在,近赤外の波長に反応する微小遊泳装置の開発に取り組んでいる。近赤外線なら数cmの組織を透過できる。体内のさらに深い部分で使うには,光ファイバーを使って制御すればよいだろう。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の2017年4月号誌面でどうぞ。

 

 

サイト内の関連記事を読む