News Scan

南極で果物栽培〜日経サイエンス2017年4月号より

新設計の温室が登場間近

 

南極大陸の終わりのない冬にあって,一粒のジューシーなイチゴは最大の贅沢だ。ドイツが運営するノイマイヤーⅢ南極基地にいる研究員は間もなく,幸運にもそのごちそうを日常の食事に加えることができるかもしれない。他の新鮮な果物や野菜も。ドイツ航空宇宙センターの技術者は現在,南極基地向けに通年型の温室を開発している。

 

「エデンISS」というこの閉鎖系は長さ約6mの運送用コンテナで,10月に南極に向かう予定。温室の将来の管理人となるツァーベル(Paul Zabel)らは3月からブレーメンで試行を始める。隔絶された南極の状況を想定し,30~50種を栽培する計画だ。トマトやトウガラシ,レタス,イチゴのほか,南極の科学者の典型的な食事となっているパック食品に新鮮な風味を加えるバジルやパセリなどのハーブが含まれる。「後処理の必要がないもの,獲ったらすぐに食べられる作物に的を絞っている」とツァーベルはいう。

 

空中栽培,二酸化炭素を強化,LED照明も特別

南極の過酷な条件で野菜を栽培するには変わった手段が必要だ。エクストレム棚氷上の気温は−30℃まで下がることがあり,太陽が昇らない日が数カ月続く。こうした逆境を克服するため,ツァーベルは土を使わない「空中栽培」という栽培法を採用した(米国とオーストラリアの基地にある温室も同じ手法を用いている)。

 

果物や野菜の植物を棚の上に載せ,根は空中にぶら下げて,肥料を含んだ水滴を数分おきに吹きつける。24℃の温室には特別に二酸化炭素を注入して濃度を高める。42個の発光ダイオード(LED)ランプは植物の生育を促す赤と青の波長に調整するため,温室は紫色に見える。

熟した果物や野菜を食べられることは,来季にノイマイヤーⅢで越冬する予定の10人の志気向上につながるだろう。だが,この温室は極地研究者にごちそうを提供する以上の意義があるとツァーベルはいう。最終的には,国際宇宙ステーションや火星など,さらに厳しい環境で植物ベースの食物を効率的に栽培する技術を試す狙いがある。■

 

ほかにも話題満載!現在発売中の2017年4月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む