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金星の弓状模様の謎が解けた!〜日経サイエンス2017年4月号より

探査機「あかつき」が発見した現象は大気を伝わる波で生じた

 


Planet-C

謎が多い金星大気に一昨年,新たな謎が加わった。金星探査機「あかつき」による大気上層の赤外線観測で,南北方向に約1万km伸びる巨大な弓状模様が捉えられた。金星大気上層では,ほぼ全緯度にわたって常に猛烈な東風が吹いているが,南北に伸びる弓状模様は強い東風によって乱れることなく,4日間にわたって観測された。なぜ弓状模様が生じ維持されるのか研究者も首をひねったが,シミュレーション研究で成因が解明され,1月17日付のNature Geoscience誌に掲載された。

 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所を中心に多数の大学の研究協力体制で実現した「あかつき」は2010年12月,金星周回軌道への投入に失敗したが,5年後の再挑戦で成功した。当初予定の軌道とは異なるものの運用に工夫を凝らし,2015年12月以来,順調に金星の観測を行っている。巨大な弓状模様は日本の惑星探査史上,記念すべき金星周回軌道上からの初観測で得られた。だれもが予想もしていなかった弓状模様がモニターに映し出されると驚きの声があがった。

 

金星の高度45~70kmには厚い硫酸の雲の層があり,金星全体を覆っている。雲の最上層の温度分布は,雲が発する波長約10µmの赤外線を捉える「あかつき」の中間赤外カメラLIRの画像からわかる。初期観測を行った2015年12月7日から同月11日までの5日間のLIRの画像には,先述したような南北に伸びる弓状模様が表れていた。その後,翌2016年1月半ばに観測を再開した時には弓状模様は消えていた。

 

弓状模様は金星の低緯度から中緯度の上空に伸び,詳しく見ると明るい模様と暗い模様がペアになっていることがわかる。明るい模様は金星の雲上層の温度が平均温度(約−40℃)より高温の領域,暗い模様は低温の領域になる。両者の温度差は5℃ほど。

 

以前,欧州の金星探査機が赤外線分光観測を行ったが,こうした模様が発見されたとの報告はない。「あかつき」は金星の低緯度上空を周回するのに対し,欧州の探査機は南北両極上空を通過する極軌道で,主に南半球の高緯度領域を観測していたため,弓状模様が中低緯度領域に出現しても気付かれなかった可能性がある。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年4月号誌面でどうぞ。

 

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