News Scan

アザラシの時間感覚〜日経サイエンス2017年3月号より

1秒足らずの違いをちゃんと識別

 

毎日のスケジュールや季節的サイクルに従って行動する動物は数多いが,彼らは短時間の区別,例えば3秒と13秒の区別ができるのだろうか? マルハナバチやハト,ネコなどが,ある程度の精度で時の経過を認識していることは知られている。独ロストック大学海洋科学センターの生物学者ハンケ(Frederike D. Hanke)は長年にわたる捕獲アザラシの研究の結果,アザラシも時間認識が可能らしいとみている。

 

ハンケの研究チームは同センターで飼育している11歳のゼニガタアザラシ「ルカ」で,この仮説を検証した。パソコン画面の黒い背景に白い円を3~30秒間映し,いったん消してから再び映した。ルカには,2度目に円が映った時間が1度目よりも長いと思ったら片方のボタンを,同じ長さだと思ったら別のボタンを押すように教え込んだ。そして正解した場合には,ご褒美においしいニシンを与えた。

 

この結果,ルカはわずか420ミリ秒の違いを検知できることがわかった。つまり,3秒間の表示と3.42秒間の表示を区別できた。ただし円の表示時間を長くすると,両者を区別する精度は落ちた。先ごろのAnimal Cognition誌に掲載されたこの実験結果は,鰭脚(ききゃく)類動物の時間測定能力を報告した初の例だ。

 

強固にしてよく調整された感覚

魚を追っている際に素早い判断を下すため,あるいは他のアザラシが様々な時間間隔で発した声を識別するために,アザラシはこの技能を進化させたのだろうとハンケはいう。ハンケは実験を他のアザラシに広げるとともに,視覚刺激の代わりに音響刺激を用いた実験も計画している。

 

鰭脚類の認知能力を研究しているニューカレッジ・オブ・フロリダの心理学者クック(Peter Cook)は,ルカがこのテスト課題を簡単に学習したことに驚いている。こうした精神物理学実験では動物に多くの訓練が必要になるのがふつうだが,ルカは2回の訓練セッションで要領を習得した。

 

「非常にわずかな時間的違いだが,アザラシにはその差が実にはっきりとわかっている。この時間感覚が非常に強固でよく調整されたものであることを強く物語っている」とクックはいう。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の2017年3月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む