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視覚を備えた植物〜日経サイエンス2017年3月号より

まじめな話,その可能性がある

 

オカルト話めいて聞こえるだろうが,そこの木はあなたを見ているかもしれない。最近のいくつかの研究は,植物に視力があることを示唆している。非常に単純ではあるが,目に似たものを持っている可能性もある。

 

植物に“目”があるかもしれないという考えは,ある意味で新しいものではない。1907年,フランシス・ダーウィン(Francis Darwin,チャールズ・ダーウィンの息子)はレンズのような細胞と光感受性細胞が組み合わさった器官が木の葉に備わっているという仮説を立てた。現在では「眼点細胞」と呼ばれている構造で,20世紀前半の実験でその存在が確認されたものの,「ものを見る植物」という考え方はそれ以上発展せずに廃れた。再浮上してきたのはここ数年のことだ。

 

新たな証拠の数々

独ボン大学の植物細胞生物学者バルーシュカ(František Baluška)と伊フィレンツェ大学の植物生理学者マンキューソ(Stefano Mancuso)は最近のTrends in Plant Science誌で,視覚を持つ植物に関する新たな証拠をまとめた。2人はまず,シネコシスティス属(Synechocystis)のシアノバクテリア(藍藻,光合成能力を持つ単細胞生物)が眼点細胞のように作用するという2016年の発見を挙げている。「これらのシアノバクテリアは細胞体全体をレンズとして利用し,光源の像を細胞膜に投影している。動物の目で網膜に像が投影されるように」と,この発見に寄与したロンドン大学の微生物学者マリノー(Conrad Mullineaux)はいう。

 

このメカニズムが何のためにあるのかは不明ながら,その存在は同様の機構がもっと高等な植物でも進化している可能性を示唆している。「こうしたものが比較的下等な生物に存在する場合,進化の過程でそれが維持されていく可能性が高い」とバルーシュカはいう。

 

最近の研究結果はまた,キャベツやカラシナの近縁であるシロイヌナズナ属(Arabidopsis)の植物などが,「眼点」の発達と機能に必要なタンパク質を作っていることを示した。眼点は緑藻類など一部の単細胞生物に見られるごく基本的な目のことだ。これらのタンパク質は「プラストグロビュール」という構造のなかに特異的に現れる。秋に木の葉が赤や橙に色づくのはプラストグロビュールの作用による。「この発見は植物のプラストグロビュールが眼点として作用している可能性を示唆している」とバルーシュカはいう。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年3月号誌面でどうぞ。

 

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