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「未来への投資」は危機的状態〜日経サイエンス2017年1月号より

全国の国立大学の理学部長が共同で声明を発表した

 

2016年のノーベル生理学・医学賞が東京工業大学の大隅良典栄誉教授に贈られることが発表された去る10月3日夜,東京工業大学での記者会見で,大隅博士は受賞の喜びを語るとともに,実社会への応用を重視する国の研究開発投資のあり方,裏返していえば基礎研究への投資の先細りに強い懸念を表明した。全国の国立大学34大学の理学関連学部の長からなる国立大学法人理学部長会議も,10月31日に声明を発表し,研究費のベースとなる運営費交付金の削減が続いている現状に強い危機感を表明した。

 

東京工業大学の大岡山キャンパスで開かれた記者会見には東京大学,東京工業大学のほか,お茶の水女子大学や琉球大学などの理学部長も出席,大学の規模や地域に関係なく共通の問題意識を持っていることをアピールした。この時期に,こうした声明を東工大で発表したのは,大隅博士が表明した懸念は博士ひとりのものではなく,国立大学で基礎科学を担う理学系教員が等しく抱いていることを広く社会に訴えるのが目的だったという。

 

「未来への投資」と題した声明では基礎科学について「今すぐ社会の役に立たないかもしれないが,いずれ役に立つ,と私たちは確信している」と述べている。また,「役に立つ」を前提とした応用重視の研究からは,2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章博士の業績である素粒子ニュートリノの質量の発見や,大隅博士の業績である細胞内の物質のリサイクル機構の発見のような「だれも踏み込んだことのない新たな発見」は決して生まれ得ないとしている。

 

10年以上続く運営費交付金の削減

実際,ニュートリノの質量の発見のような基礎物理学の成果が社会にどのようなインパクトを与えるのか現時点で予想するのは困難だ。しかし例えばアインシュタインが提唱し,様々な基礎実験で検証された相対性理論は,提唱から1世紀を経た現在,自動車や携帯電話に組み込まれている位置表示機能の精度を保持する(GPS衛星からの時刻信号を補正する)ために不可欠なものだ。相対論がなければカーナビは使えず,ポケモンGOは楽しめず,自動走行も実現しない。(続く)

 

続きは現在発売中の2017年1月号誌面でどうぞ。

 

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