News Scan

音響プリズム登場〜日経サイエンス2017年1月号より

デジタル処理なしで音を周波数別に分けられる

 

400年近く前,ニュートン(Isaac Newton)はガラス製のプリズムを使うと白色光を虹のすべての色に分割できることを示した。最近,スイスの電気工学者チームは,音について同様のことを実現できる装置を作った。つまり,物理的な手段だけで,音をその周波数成分に分ける。

 

この「音響プリズム」は,長さ40cmの中空のアルミニウム製ケースで,側面に10個の穴が並んでいる。ケースの内部は,柔軟な高分子膜によって複数の小部屋に分かれている。障壁となっている膜が振動して隣の小部屋に音を伝えるのだが,音波の周波数によって遅れが生じる。遅れた音波が穴から漏れ出す際に異なる方向に屈折するので,周波数が最も低い音(赤色光に相当)は音源に最も近い端で聞こえ,周波数が最も高い音(青色光に相当)は音源から見て装置の下手へ屈折する。

 

「水滴やガラス製プリズムが光の各色を異なる角度に屈折する仕組みをまねている」と,スイス連邦工科大学ローザンヌ校で信号処理を研究しているエスファラーニ(Hussein Esfahlani)はいう。この装置の設計は先ごろのJournal of the Acoustical Society of America誌に発表された。

 

エスファラーニによると,この音響プリズムは思考実験として始まったが,実際の応用も考えられる。ホワイトノイズから信号を含む意味のある周波数を分離したり,特定の周波数の音がどの方向から来ているのか音源を正確に判断したりするのに使えるかもしれない。「音の周波数を区別するための非常にエレガントで効率的な方法だ」と,マサチューセッツ工科大学の機械工学教授ファング(Nicholas Fang,今回の研究には加わっていない)はいう。■

 

ほかにも話題満載! 現在発売中の2017年1月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む