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シカは南北方向へ逃げる〜日経サイエンス2016年12月号より

磁気感覚を備えているのだろうか?

 

のんびり草を食べているシカが何かに驚くと,群れ全体が一斉に整然と走り出す。恐怖にかられパニック状態に陥っていてもおかしくない動物たちが,どうやって互いにぶつからず整然と逃走するのだろうか?

 

チェコ生命科学大学プラハの生物学者ブルダ(Hynek Burda)らはノロジカに注目した。欧州に生息しているシカで,草原で草を食んでいることが多い。狩猟の標的として好まれているので,人間が危険だと知っており,人が近づくと逃げ出す。ブルダらは2014年の春と夏,チェコにある3カ所の狩猟場でシカの群れ188グループを意図的に驚かした。

 

当然の予測として,シカは近づいてくる脅威と反対の方向に逃げるか,最寄りの茂みに向かうだろうと考えられた。ところが実際には,北か南の方角に逃げる傾向が見られた。

 

ブルダはこの観察から,ノロジカは体内に一種のコンパスを持っていて地磁気を感知できるのだろうと考えている。「磁気感覚は一般に考えられているほど珍しいものではないようだ」とブルダはいう。磁気感覚のおかげで,群れをなした状態でも各個体がぶつからずに逃げられるのかもしれない(同じ方向に走るから)。危険が去ればすぐにもとの群れに集まることも可能だろう。この発見はBehavioral Ecology and Sociobiology誌8月号に掲載された。

 

ワイオミング大学にいる動物学者のカウフマン(Matthew Kauffman)は,この結果は興味深いという。捕食者を回避する戦略に地磁気を使うという発想はなかなか出てこないからだ。しかしカウフマンは,この説を確認するにはもっと証拠が必要であり,今回とは別の場所で異なる季節に実験を繰り返すべきだという。「東西南北の基本方位に関連しているものは自然環境中にたくさん存在しているだろうから」。■

 

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