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脳はいちいち音読しない〜日経サイエンス2016年11月号より

単語を視覚的にとらえた“辞書”が存在

 

 子供が初めて読み方を覚えるときには,1文字ずつ苦労して声に出し(猫のcatならC-A-Tというように),それらを頭のなかでつなぎ合わせた結果を単語と意味に関連づけている。だが訓練を積むと,私たちは単語を視覚によって認識し始める。

 

 実際,Neuroimage誌に発表された新研究によると,人間の脳は視覚的な“辞書”を編纂しており,それは顔認識領域に隣接する後部側頭葉に位置している。この辞書が最終的には,脳でフォニックス(英語のスペルと発音の関係)を処理している中枢の任務に取って代わるのであり,上級の読者になるにはこの視覚的辞書が欠かせないという。

 

同音異義語で異なる脳の活動

 サンディエゴ州立大学(カリフォルニア州)のポスドク研究員グレセル(Laurie Glezer)らは,英語を母語とし英語のみを話す上級の読者27人を被験者として,同音異義語を読んでいる際の脳の活動を解析した。同音異義語は「hair(毛髪)」と「hare(野ウサギ)」のように,発音は同じだが意味の異なる単語だ。この結果,同音異義語が後部側頭葉にある異なるニューロン集団を活性化することを発見した。これはこれらの単語に別々の視覚的な“見出し項目”がついていることをうかがわせる。これに対し,同音異義語を音読した場合には,同じグループのニューロンが活性化した。

 

 「単語の視覚的側面を計算する脳領域と音韻的側面を計算する脳領域が別々に存在し,ともに非常に重要な役割を果たしていると考えられる」とグレセルはいう。

 

失読症の人は視覚的辞書に問題?

 この研究結果は新しい教授法のヒントになるかもしれない。「読み方の最適な学習方法とは何かという議論において,フォニックスを第一とする考えがある」と,ジョージタウン大学医療センターの計算認知神経科学研究所長でこの論文を共著したリーゼンフーバー(Maximilian Riesenhuber)はいう。だが「今回の研究はその考えを否定する。熟練した読者は視覚的な辞書を構築しており,見慣れた単語についてはその全体を目にして,この辞書をひいているのだ」。(続く)

 

続きは現在発売中の2016年11月号誌面でどうぞ。

 

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