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脳の内堀を突破〜日経サイエンス2016年8月号より

医薬品を広く送達する試み

 

脳はある特徴のために,薬物治療が難しい。細胞が高密度に集まった層によって隔離されているのだ。この「血液脳関門」は中枢神経系に有害物質や細菌が侵入するのを防いでいるものの,経口薬や静脈注射薬についても約95%を遮断してしまう。この結果,パーキンソン病などの神経変性疾患の治療には患者の脳に薬を直接注入しなければならない場合が多い。頭蓋骨に穴を開ける必要があり,患者の負担が大きい。

 

超音波で補助したり薬をナノ粒子にくっつけたりして静注薬を脳に届ける方法が多少は成功しているが,こうした方法は脳の小さな領域しか狙えない。これに対しカリフォルニア工科大学の神経科学者グラディナル(Viviana Gradinaru)らは最近,無害のウイルスを使い,血液脳関門を突破して脳全体に薬を送達できることを示した。

 

数百万のアデノ随伴ウイルスを試して

グラディナルらがウイルスに着目したのは,ウイルスが小さくて細胞に侵入しやすく,細胞中のDNAを乗っ取ることもできるからだ。さらにタンパク質の殻を持っており,そこに医薬品や治療用遺伝子などのお届け物を乗せられる。脳に入れる適切なウイルスを探すため,研究チームはあるアデノ随伴ウイルス株を遺伝子操作して,殻の構造がわずかに異なる数百万の変異株を作った。これらをマウスに注射し,1週間後に,脳に到達した株を回収した。この結果,AAV-PHP.Bという名のウイルスが血液脳関門を最も確実に通り抜けることがわかった。(続く)

 

続きは現在発売中の2016年8月号誌面でどうぞ。

 

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