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インターネットの北西航路〜日経サイエンス2016年8月号より

欧州とアジアを結ぶ最短経路が可能に

 

極地探検家のアムンセン(Roald Amundsen)と6人の乗組員が氷で覆われた北西航路を初めて通過してから100年あまり。この6月,アムンセンのときよりもはるかに大きな船が同じ北西航路を部分的にたどることになっている。冒険のためではない。北極圏を通ってアジアと欧州をつなぐ海底光ファイバーケーブルの敷設を始めるのだ。両大陸間で伝送されるインターネット信号にとって,実質的にこれまでで最短の経路となる。


Map by Pitch Interactive, Source:Quintillion

 

現在,ワールド・ワイド・ウェブの基幹をなす海底ケーブルの大半は大西洋や太平洋を横断して米国と欧州,アジアを結んでいる。だが,気候変動と夏季の北極海の氷の融解が加速し,北方にケーブル経路を設ける可能性が開けた。

「こうした革新的な新経路の採算性が今までになく高まってきた」と,ニューヨーク大学のメディア・文化・コミュニケーション研究者で2015年に著書「The Undersea Network」を出版したスタロシエルスキー(Nicole Starosielski)はいう。

 

今回,クインティリオン・ネットワークス(本社アンカレジ)は同社のケーブルによってアラスカとカナダの辺鄙な地域に高速のインターネット接続を初めて提供できると考えている。またこのケーブルはロンドンと東京の間の伝送遅延を減らすと期待されるほか,ミリ秒単位で取引する株式売買システムで遅延を最小限にとどめるのにも役立つだろう。

 

米国の監視やサービスの停止を避けるため,多くの国が米国中心のケーブル経路を減らしてバックアップ回線を追加することを望んでいるとスタロシエルスキーはいう。そうした政治的・経済的な配慮が,多額の費用をかけても新ケーブルを敷設しようという意欲を刺激した。ただ,北極ルートその他の海底インターネットケーブル計画が長期的にうまくいくかどうかは,時のみが語ってくれるだろう。■

 

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