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群れて転移するがん細胞〜日経サイエンス2016年6月号より

新たな治療標的として有望だ

 

がんによる死亡のほとんどは転移が原因だ。腫瘍組織からがん細胞が離脱して新たな場所に定着すると,治療は難しくなる。最近の研究から,転移腫瘍の大半は予想に反して,原発腫瘍の1個の細胞に由来するのではなく,様々ながん細胞の塊が一群となって離脱した後に血流に乗って移動してきたものが“たね”になっていることがわかった。こうした血流中の細胞塊のがん細胞は互いに情報をやり取りし,特定のタンパク質を作り出している。このタンパク質を薬剤標的や転移リスクのバイオマーカーとして利用できるだろう。

 

ジョンズ・ホプキンズ大学のがん細胞生物学者エワルド(Andrew Ewald)らは転移腫瘍がどのようにできるのかを突き止めるため,様々な色をつけたがん細胞の混合物をマウスの乳腺に注入した。この腫瘍から1個の細胞が離脱してどこかに転移腫瘍を形成した場合,その転移腫瘍は顕微鏡下で1色の塊に見えるはずだ。複数の細胞からなる塊が“たね”になった場合には,転移腫瘍は多色の塊になるだろう。結果は転移腫瘍の約95%が多色となり,多数の細胞に由来することを示した。

 

研究チームは次に,数百個のがん細胞をシャーレ上で互いに触れ合わないように配置して培養した。すると,ほぼすべてのがん細胞が死んだ。逆に,凝集したがん細胞の塊を培養したところ,シャーレ上の“たね”の数は先の実験より少ないにもかかわらず,コロニーの数が増えた。「細胞数の違いを補正すると,凝集細胞の転移形成効率は単独の細胞の100倍以上になる」とエワルドはいう。この発見は2月の米国科学アカデミー紀要に掲載された。

 

移動中の細胞塊を狙い撃ちに

なぜ凝集細胞が生き延びて効果的に転移するのか完全にはわかっていないが,塊のなかで腫瘍細胞が協力しあって(シグナル伝達分子の増強など),血流中や転移先での細胞死を防いでいる可能性が高いと,ハーバード大学医学部のがん細胞生物学者ブルージュ(Joah Brugge)はいう。(続く)

 

続きは現在発売中の2016年6月号誌面でどうぞ。

 

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