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「ひとみ」に深刻なトラブル〜日経サイエンス2016年6月号より

通信回復が試みられ,原因究明作業が続いている

 

X線天文衛星「ひとみ」に3月26日,深刻なトラブルが発生,4月上旬時点でも通信が途絶した状態が続いている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は通信回復の試みを続けるとともにトラブルの原因究明を急いでいる。

 

事故原因について当初,宇宙ゴミとの衝突説や搭載装置の爆発説なども取り沙汰されたが,4月8日のJAXAの発表によれば姿勢制御系の異常説が濃厚だ。何らかの異常でスラスタ(姿勢制御用の小型ロケットエンジン)が誤って噴射された結果,機体が猛烈な速度で回転,機体から翼のように出ている太陽電池の一部などが振り飛ばされた可能性がある。予定通りの観測ができない事態となれば日本はもちろん世界の天文学の研究に重大な影響が出る。

 

「ひとみ」(ASTRO-H)は天体のX線とガンマ線を詳しく観測する国際天文台としての使命を担い2月17日に打ち上げられた。総重量2.7トン,全長約17m。日本の天文衛星の中でも最大規模だ。高度約575kmの地球周回軌道に投入された後,2月末から試験観測を行っていた。

 

トラブルが起きた3月26日の未明,「ひとみ」はJAXA内之浦局(鹿児島県)と何度か通信しつつ,かに星雲(天の川銀河の代表的なX線天体)の観測を行った後,次の観測対象の活動銀河核(強いX線を出す遠方の銀河)に望遠鏡を向けるため,同日午前3時1分から姿勢変更を開始した。そして姿勢変更が続いていた3時13分,内之浦局との通信を予定通り終えた(1つの地上局との通信は,衛星の軌道運動と地球の自転の関係から一定時間に限られる)。

 

ところが次の通信をJAXAマスパロマス局(大西洋のスペイン領カナリア諸島)との間で午前5時49分から約10分間行った時,姿勢異常が検出された(ただし事故発生当日,JAXAが「ひとみ」の異常を確認したのは,16時40分から予定していた海外地上局での通信ができなかった時点だった。当日午前中の海外地上局での通信は衛星の基本状態のデータを受信するためのものだったので,事後のデータ解析でこうした状況が判明した)。

 

これまでの情報から推定すると「ひとみ」は午前3時20分頃,予定通り姿勢変更を終え,活動銀河核の観測を始めたとみられるが,その観測中の同4時10分頃,何らかのトラブルが起きて機体が回転し始めた。17時間で1回転する程度のゆっくりした動きで,その後の海外地上局との通信データから推定すると同10時頃まではこうした状態が続いていたようだ。(続く)

 

続きは現在発売中の2016年6月号誌面でどうぞ。

 

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