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耳は距離計〜日経サイエンス2016年4月号より

人間は目だけでなく耳も使って距離を推し量っている

 

IMAGE:John Fowler

稲光が見えて数秒してから雷鳴が聞こえるのは,光と音のスピードが異なることを示す好例だ。だがほとんどの場合は視覚刺激と聴覚刺激の時間差は短すぎて知覚できない。ところが,人間はこうした微小な差から距離の情報を引き出せることが最近の研究で明らかになった。

 

ロチェスター大学の研究チームは12人の被験者に点の集まりの投影像を見せた。点が現れてから40~60ミリ秒後(この時間間隔は短すぎて意識的には感知できない)に音を鳴らした場合には,音が同時か先に鳴った場合に比べて,点の集まりが遠くにあると判断された。この研究を率いた認知神経科学のポスドク研究員ジェイクル(Philip Jaekl)は,「距離は脳にとって非常に計算しにくい」ものであり,脳がその算出のためにあらゆる感覚情報を使うのは理にかなっていると説明する。最近のPLOS ONE誌に発表。

 

カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学・神経科学教授サイツ(Aaron Seitz)は,今回の研究結果は視力が左右の目で大きく異なる不同視弱視の人に両目で見る訓練をする際に利用して効果を高めるなど,臨床に役に立つ可能性があるという。また,仮想現実環境のリアルさを高めるなど,他の実用的な使い道もあるだろう。エピックゲームズ社のバーチャルリアリティー工学者ホワイティング(Nick Whiting)は「遅れを加えることは,真実味にあふれた経験を生み出す新手法になりうる」という。■

 

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