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脳の指紋〜日経サイエンス2016年3月号より

回路接続の特徴を画像で特定可能

 

人はみな自分が独自の存在だと思っており,指紋やDNA鑑定などの個人識別法はその確信を裏づけてくれる。そして最近のある研究は,各人の脳も独自の明確なパターンを示しており,ほぼ完璧な精度で個人識別に使えることを明らかにした。

 

エール大学のフィン(Emily Finn)が率いる研究グループは機能的結合MRI(fcMRI)を用いて126人の健康な若年成人の脳の活動を調べた。そして,脳の様々な領域に対応する268のノードの間の結合強度を推定し,これをもとに「結合プロフィール」を被験者ごとに作成した。このプロフィールは指紋のように本人独特のものとなり,94%の確度で個人を識別できた。

 

次に視覚や運動などのタスクを担っている神経回路に関連するノードに注目し,他よりも個人差を大きく反映しているネットワークを探した。この点で最も特徴的だったのは集中力と注意力に関係する前頭・頭頂葉のネットワークで,99%の確度で個人を特定できた。

 

当人の経験を反映?

前頭・頭頂葉のネットワークは比較的最近に発達したものであり,感覚や運動に関する神経回路が生来のものとして備わっている部分が大きいと考えられるのに対し,その人の経験を敏感に反映しているとみられる。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の認知神経科学者ガザニガ(Michael S. Gazzaniga)は「誰でも岩が落ちてくるのを見たらよけることができるが,そもそも岩がどうして落下するのかを解明するのが得意な人は一部だ」という。そうした個性が前頭・頭頂葉に表れているのだろう。

 

フィンらはこの技術を人物同定に使うことは勧めない。「本人識別のために当人を脳スキャナーに入れる必要などない」。だが去る秋にNature Neuroscience誌に報告されたこの発見は,fcMRIを臨床に利用する新たな道を示している。ネイサン・クライン精神医学研究所の神経画像検査の専門家クラドック(Cameron Craddock)は「心の健康状態を示す指紋となるかもしれない」という。フィンらは,統合失調症のリスクが高い若者から得たデータを使って,スキャン画像を将来の発症予測に利用できないか調べ始めたという。

 

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