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宇宙背景ニュートリノの証拠〜日経サイエンス2016年2月号より

ビッグバンとともに生じたニュートリノが後の宇宙背景放射に残した痕跡を特定

 

宇宙最古の光は138億2000万年の間,一瞬たりとも休むことなく宇宙空間を進んできた。ビッグバンのわずか38万年後に旅を始めたいわゆる宇宙マイクロ波背景放射(CMB)で,幼年期の宇宙を探る天文学者にとっておなじみの研究対象になっている。だがあいにく,この光からはそれ以前のこと,つまり宇宙最初の数十万年間についてはわからない。

 

ところが最近,マイクロ波背景放射以前の宇宙を垣間見たと天文学者たちは考えている。宇宙誕生のわずか1秒後から宇宙空間を移動しているニュートリノの証拠がとらえられた。

 

ニュートリノで光子の温度が変化

ニュートリノは電荷を持たず質量の極端に小さな素粒子で,ビッグバンとほぼ同時に放射された。極めてとらえにくいため,ほぼすべての物理障壁をすり抜けることができ,通常の物質とはめったに相互作用しない。だがまれに光子と衝突すると,光子の温度を非常にわずかだが変える。

 

欧州宇宙機関(ESA)のプランク衛星が観測したマイクロ波背景放射の分布マップについてカリフォルニア大学デービス校の天文学者たちが最近気づいたのは,この温度変化だった。研究チームはこの「宇宙背景ニュートリノ」をPhysical Review Letters誌に報告した。

 

宇宙背景ニュートリノの存在はビッグバン理論によって数十年前に予想されていたが,今回の間接的な観測はこれまでで最も確かな証拠だ。この発見は「宇宙を見る新たな窓を開けてくれる」と,アリゾナ州立大学で宇宙論イニシアチブの共同代表を務めるクラウス(Lawrence M. Krauss)はいう。今回の検出はまた,素粒子のなかでも圧倒的に奇妙で謎の多いニュートリノの特性を絞り込んだ。例えば,ニュートリノは他の多くの素粒子とは違って,自分自身とは相互作用しえないことが確かになった。もしニュートリノどうしが相互作用できるなら,マイクロ波背景放射に残す痕跡が観測されたものとは異なるものになるからだ。(続く)

 

続き 現在発売中の2016年2月号誌面でどうぞ。

 

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