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太陽コロナ加熱の現場が見えた〜日経サイエンス2015年11月号より

日米連携の衛星観測で波のエネルギーが熱に変わる様子がわかってきた

 

太陽には大きな謎がある。太陽表面の温度は絶対温度6000Kなのに,その外側のコロナという電離ガス(プラズマ)領域は数百万K。コロナで加熱が起きているのは明らかだが,そのメカニズムがわからない。この謎を解く新たな糸口が,日米の太陽観測衛星の連携とスーパーコンピューターによる数値シミュレーション研究で得られた。

 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国立天文台などが8月24日に発表した。名古屋大学太陽地球環境研究所の岡本丈典研究機関研究員と国立天文台のパトリック・アントリン研究員を中心とする国際共同グループの成果だ。

 

コロナ加熱でカギを握るのは太陽磁場。太陽は内部の物質の動きによって,地球よりはるかに強力な磁場を生み出し,無数の磁力線が太陽表面から宇宙空間へと延びている。プラズマと磁力線は強く結びついており,プラズマを構成する荷電粒子は磁力線に巻き付く一方,プラズマの動きに応じて磁力線の方も動く。太陽表面の磁場が強い場所の上方に,コロナの中でも高温の領域が存在しており,両者の関係が深いことがうかがえる。

 

太陽磁場によるコロナ加熱のメカニズムとして有力なのが「波動加熱説」だ。太陽表層を構成するプラズマの対流などによって磁力線が揺さぶられ,一種の横波である「アルベーン波」となって磁力線を伝わってコロナに到達,そこで波のエネルギーが熱エネルギーに変換され,加熱が起きるという説だ。

 

アルベーン波の存在は日本の太陽観測衛星「ひので」による2007年の観測で裏付けられている。磁力線自体は見えないが,プラズマが磁力線に巻き付いているため,磁力線に沿ってプラズマがチューブ状に明るく輝いている。「ひので」は多数のチューブ状のプラズマの集まり(プロミネンス)が波打ち,その波が伝わる様子を捉えた。

 

プロミネンスの温度が急上昇

今回はさらに一歩進んで,「ひので」と米国の太陽観測衛星「IRIS(アイリス)」の連携によるプロミネンスの観測で,アルベーン波がコロナ領域で熱エネルギーに変換される現場が初めて捉えられた。アルベーン波は遠方までエネルギーを運べるが,熱エネルギーに転換されにくい問題があった。アルベーン波による加熱が実証されたことで,コロナの波動加熱説の研究に大きな弾みがつきそうだ。(続く)

 

続きは現在発売中の11月号誌面でどうぞ。

 

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