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しつこいライム病〜日経サイエンス2015年11月号より

5人に1人は抗生物質による治療後も症状が消えない

休眠状態の「生残菌」が原因かも

 

By Richard Bartz,via Wikimedia

ライム病は本当に厄介な病気だ。マダニが媒介するこの感染症はかつて,簡単に克服できると考えられていた。マダニに咬まれた場所を中心にできる目玉のような赤い発疹が診断の決め手となるこの病気は,抗生物質を数週間服用すれば治るだろうと。だが米疾病対策センター(CDC)はここ数十年で,ライム病患者の5人に1人が治療後も疲労や痛みなどの症状を引きずっていることに気づいた。「治療後ライム病症候群」と呼ばれ,原因は不明だ。

 

問題は拡大している。全米のライム病発生数は過去10年で約70%増えた。現在,米国で毎年30万人以上が感染し,北東部ではクロアシマダニの成虫の過半数がライム病の病原体であるボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)というスピロヘータを抱えていると推定されている。問題解決には程遠いものの,これまで異論の多かったある説を支持する結果が最近の研究によって得られた。ライム病が慢性化するのはこの病原菌が抗生物質を巧みにかわすためであり,投薬のタイミングを変えれば一部の慢性化をなくせる可能性があるという見方だ。

 

「持続生残細胞」の発見

これらの説はブルグドルフェリ菌のなかに悪質なものが少数見つかったことから生まれた。ノースイースタン大学で抗生物質発見センターの所長を務めているルイス(Kim Lewis)らがブルグドルフェリ菌を実験室で増殖し,様々な抗生物質で処理したところ,大半は1日目に死滅するのに,ほんの数%ではあるが薬の猛攻を生き延びる「持続生残細胞(生残菌)」があることがわかった。こうした生残菌は1944年に黄色ブドウ球菌で初めて見つかり,ルイスらは他の細菌種でも観察してきたが,ブルグドルフェリ菌が生残細胞を形成するのが見つかったのは初めてだ。

 

「これまでで最も丈夫な生残菌だ」とルイスはいう。「抗生物質の存在下で何日たっても数が減らない」。この発見は5月にAntimicrobial Agents and Chemotherapy誌電子版に掲載された。ジョンズ・ホプキンズ大学の研究グループも同様に,ブルグドルフェリ菌の持続生残細胞を今春に発見した。(続く)

 

続きは現在発売中の11月号誌面でどうぞ。

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