きょうの日経サイエンス

2015年7月17日

南部陽一郎博士が死去されました

 素粒子論研究で世界的に知られ,2008年にノーベル物理学賞を受賞された南部陽一郎博士が7月5日,死去されたことが17日,大阪大学より発表されました。謹んでお悔やみ申し上げます。

 博士は1960年代初め,素粒子物理学の礎となっている「対称性の自発的破れ」の概念を提唱されました。ヒッグス粒子の基本的なアイデアのおおもとも,この対称性の自発的破れにあります。陽子と中性子(核子)を構成する素粒子クォークを結びつける「強い力」の振る舞いは「量子色力学」で記述されますが,そのおおもとも博士が提唱されたものです。万物を説明する究極理論の候補となっている「超弦理論」の源流も博士にあります。近年の超弦理論の数値シミュレーション研究によると,宇宙そのものが,対称性の自発的破れによって誕生した可能性も示唆されています。21世紀の素粒子物理学は博士の業績を礎に大きく発展していくことでしょう。

 博士には1970年代から弊誌や提携誌ScientificAmericanに寄稿いただいています。ちなみに最新号の巻頭特集「クォークの世界」には量子色力学をわかりやすく解説した図版を掲載していますが,これは博士が執筆されたサイエンス(日経サイエンスの前身)1977年1月号の記事の図版を転載したものです。先述した対称性の自発的破れについては,別冊日経サイエンス165『素粒子論の一世紀』に,超弦理論の数値シミュレーションについては別冊日経サイエンス203『ヒッグスを超えて ポスト標準理論の素粒子物理学』で詳しく紹介しています。

(編集部・中島林彦)