きょうの日経サイエンス

2015年7月15日

LHCでペンタクォークが発見されました!

欧州合同原子核研究機構(CERN)は7月14日,世界最強加速器LHCを用いた国際共同実験でクォークという素粒子5つからなる「ペンタクォーク」という新タイプの粒子を発見したと発表しました。「物質」の存在形態に関する私たちの認識を新たにする発見で,宇宙初期の研究にもインパクトを与えることになります。ペンタクォークについては現在販売中の日経サイエンス最新号の巻頭特集「クォークの世界」で詳しく紹介しています。

 

LHCでは4つの大きな国際共同実験が行われています。ヒッグス粒子を発見したのは,超高エネルギー領域で新たな素粒子を探索するATLAS実験とCMS実験。ペンタクォークを発見したのは,これらの実験ではなくLHCb実験です。LHCb実験はLHCによる陽子どうしの衝突で生み出されるB中間子の崩壊を高精度で測定し,「CP対称性の破れ」を詳しく調べるのが主な研究テーマですが,新タイプの複合粒子(何個かの素粒子が集まってできた粒子)の探索でも存在感を示しています。今回の研究成果もその1つになります。ちなみにCP対称性の破れについては別冊日経サイエンス165『素粒子論の一世紀』でたいへん詳しく紹介しています。

 

クォークは核子(陽子と中性子)を構成する素粒子です。核子はクォーク3つからなり,反クォーク3つからなる核子の反粒子も知られています。核子どうしを結びつける力を媒介するパイ中間子(湯川秀樹博士が存在を予測した粒子です)など中間子と総称されるタイプはクォーク1つと反クォーク1つからなります。長い間,知られていたのは,これらのタイプだけで,クォーク4つからなるテトラクォークや今回のペンタクォークなどは理論的には存在が予測されていましたものの,実験では見つかっていませんでした。

 


Image:CERN

 

それが近年,テトラクォークについては高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)にある加速器KEKBを用いた国際共同のBelle実験で続々発見され,世界的に注目されるようになりました。LHCb実験でもBelle実験で発見されたテトラクォークが再発見され,テトラクォークの実在は確実視されています。

 

ペンタクォークについては2003年,兵庫県西播磨にある大型放射光施設SPring-8の実験施設LEPSで,その候補粒子の発見が報告されています。内外の加速器施設で追試が行われましたが,今のところ高統計実験(データを大量に取得して,信頼性の高い結果を得る実験)では,その存在は確認されていません。今回,LHCb実験で発見された2つのペンタクォークは,その崩壊パターンと質量から考えてSPring-8で報告されたものとはタイプが明らかに違いますが,ペンタクォークのさらなる探索に大きな弾みがつくことは間違いなさそうです。(編集部・中島林彦)