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輸血問題に解決策〜日経サイエンス2015年9月号より

病原体を輸血血液から取り除く新技術を米国の血液バンクがこの夏に導入する

 

輸血による感染症を防ぐため,血液バンクは献血された血液に危険な病原体が混入しないよう手を尽くしている。しかしデング熱やチクングニア熱などいくつかの熱帯病に関しては病原体をスクリーニング検査する方法がないうえ,近年は地球温暖化のせいで米国内でもそれらの病原体が広がりつつある。またHIV(ヒト免疫不全ウイルス)やC型肝炎ウイルスなどの検査には時間がかかるし,血液中に未知の病原体が潜んでいる可能性もある。実際,HIVも最初はそうだった。

 

だが最近,米国の血液バンクは献血血液から病原体を除去する手段を手にした。昨年12月に米食品医薬品局(FDA)が「インターセプト血液システム」を認可し,血小板(血液の凝固成分)と血漿(液体成分)から病原体とおぼしきものをほぼ完全に取り除くことが初めて可能になった。

 

核酸の複製を阻害

シーラス社が開発したこの技術は,ウイルスと細菌の核酸(DNAやRNA)をめちゃくちゃにして,輸血患者の体内での病原体の増殖を阻止する。まず,DNAやRNAに入り込むことのできる分子を献血血液に加え,紫外線を照射する。紫外線照射によってこの分子が核酸に不可逆的に結合し,核酸の複製が阻害される仕組みだ。血漿や血小板は核酸を含んでいないので,この方法で傷つくことはない。赤血球(同じく核酸は含まない)については方法を少し変える必要があり,FDAはまだ認可していない。

 

この技術が米国で利用可能になる前は,チクングニア熱とデング熱の流行地域で集められた血液は,献血者に症状が見られないことを確認する2日間の間,使用を見合わせる必要があった。血小板の保存可能期間は5日間しかないので,この制約は大きな足かせとなっていた。(続く)

 

続きは現在発売中の9月号誌面でどうぞ。

 

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