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次期主力ロケット「H3」開発本番〜日経サイエンス2015年9月号より

2020年度に試験機の打ち上げ目指す

 

IMAGE:JAXA

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は基本設計を進めている次期主力ロケット「H3」の概要を7月8日に発表した。現在運用中のH2Aロケットと比べて打ち上げ費用を半分の約50億円に,受注から打ち上げまでの期間を半分の約1年にする。来年度から詳細設計に入り,試験機1号機を2020年度に打ち上げ,早期に商業ベースに乗せる。総開発費用は約1900億円。

 

日本は1980年代まで米国から技術導入した大型ロケットで実用衛星を打ち上げていたが,1990年代に国産技術によるH2を実用化,2000年代になってH2を改良したH2Aを運用中だ。国際宇宙ステーションへの物資輸送のため,H2Aの打ち上げ能力を増強したH2Bも開発している。

 

だが2020年代を展望すると,H2Aでは,大型化する衛星の打ち上げ需要に対応するのは困難とみられる。欧米ロケットより打ち上げ費用がかなり高いため商業衛星の受注が難しい。H2Aの開発から20年近く過ぎ,技術者の離散や技術力の低下が懸念されている。こうした状況を踏まえてH3の開発が決まった。

 

第1段エンジンを新規開発

H3はH2Aと同じ2段式ロケットで1段目に新規開発のLE9エンジンを2~3基搭載する。LE9は燃料となる液体水素と液体酸素をターボポンプで燃焼室に送り,最高3000℃で燃焼,音速の4倍で燃焼ガスを噴射し,ジャンボジェット機のエンジン5基分の推力を生み出す。

 

2段目エンジンも液体水素と液体酸素を燃料とするタイプだが新規開発ではなく,H2Aの2段目のLE5Bエンジンの改良型だ。大型衛星の打ち上げでは,H2Aの固体ロケットブースターを改良したタイプを最大4本取り付ける。

 

LE9開発のポイントはベースとしてH2Aの1段目エンジンのLE7Aではなく,2段目のLE5Bの技術を採用したことだ。LE7Aは日本のロケット技術の粋を集めたエンジンで,もともと大推力を生み出すように設計されているが,構造的にはLE5Bの方がはるかにシンプルだ。安全性と信頼性を維持しつつ製造コストを大幅削減するには,LE5Bをベースにした方がよいと判断された。

 

LE7AとLE5Bではターボポンプの駆動方式が異なる。LE7Aでは推力を生む燃焼室とは別の小さな燃焼室を設置し,ここに液体水素と液体酸素の一部を導いて燃焼,その燃焼ガスでターボポンプのタービンを回転させた後,ガスを本来の燃焼室に送り込んで推力の足しにする。スペースシャトルのエンジンにも用いられた高度な方式だ。一方,LE5Bでは燃焼室を熱源に用いて液体水素をガス化,そのガスでタービンを回し,ガスはそのまま外部に放出する。燃料の一部は推力に貢献しないが,別に燃焼室を設ける必要がないので部品点数が少なく,配管もシンプルになる。(続く)

 

続きは現在発売中の9月号誌面でどうぞ。

 

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